私の命は救われた。これは神に与えられた命。これからの人生は神に与えられた時間だ。ならば、その与えられた余命は誰かのために使おう。そう決心しました。

それから私にとっての後半戦、本当の人生が始まったのです。

私は、100歳を過ぎてもまだ現役。理事長として、年間予算が数百億円の病院を切り盛りしています。2年前、米国マサチューセッツ州のフェアへブンの町に「ホイットフィールド・万次郎友好記念館」を寄贈しましたが、先日はその記念式典に招かれ出席しました。仕事も、そうした文化事業も、自らの使命として取り組んでいます。

人はよく、病気や災害など、身の上に悪いことが起こると、自分の運命を嘆きますが、私は人の運命は変えられるものだと思っています。人の命は神に与えられしもの。しかし、運命は自身がデザインするものです。

50代、60代で、ここが人生の折り返し点などと思わないほうがいい。人が敷いたレールの上を走っている、定まった運命を生きていると思っているうちは、まだ本当の人生は始まっていません。

自らの運命を変えるのに大切なのは、人との出会いです。それも受け身でいては、人との出会いはよきものとして生きてきません。能動的によき出会いを求めていくことが大切で、そうすれば「どう生きるべきか」が見えてきます。

出会いにより得たもの、それをどう生かしていくかを考え、自分を磨き上げることにより、人生はより豊かになります。私はそう信じて、自らの使命を手帳に記しているのです。人生の終末を考えるのはまだまだ早い。

ただ、100歳になって、少しペースダウンしようとは思いました。これまでは1週間に2回くらいは徹夜していましたし、就寝も深夜の1時、2時がザラ。しかし、110歳を目指すため、11時には寝るようにしました。そうした生活習慣の改善も、わが使命を果たさんがためなのです。ステーキは食べますけどね(笑)。

聖路加国際病院理事長・名誉院長 日野原重明
1911年生まれ。京都帝国大学大学院修了。41年より聖路加国際病院に内科医として勤務。2005年、文化勲章受章。
(構成=高橋盛男 撮影=奥村 森、今清水隆宏)
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