「組織やチームをつくるうえでいちばん大切なことは何か?」と問われた野村克也さんは、「組織づくりの基本は、人間づくりである」と答えています。組織を構成する個々人の人間的成熟こそ、強い組織に不可欠だと考えていたからです。強敵と互角に戦う強固な組織をつくり上げるために野村さんが意識していたことはどのようなものだったのでしょう。

リーダーの判断ひとつで、部下が伸びるかどうかが決まる

組織づくりにおいて、野村克也が重視していたのは「人間づくり」だったという。監督の役割というと、まずはチームづくりであるが、そのためには組織を構成する一人ひとりをプロの選手として、一人前に育てなければならない。人をつくってはじめてチームづくり、試合づくりに着手できるからだ。

人間づくりとは、簡単にいえば人間形成である。近年では、自由放任主義を唱える監督が増えてきたが、チームであり組織である以上、最低限まわりの人間が不快にならないだけの社会常識やルールを身につけさせる必要がある。だからこそ野村は、長時間にわたるミーティングにおいて、野球の戦術や技術論よりも「人間とは?」「人生とは?」と、哲学的な命題を選手に投げかけ続けたのである。