※本稿は、大西俊介『CROの流儀 人・サービス・売り方を変え提供価値と収益を最大化する』(日経BP)の一部を再編集したものです。
変化の潮流に乗り遅れないために
企業は今、非連続な変化の時代に直面しています。テクノロジーは加速度的に進化し、グローバルでビジネスにまつわる規制やルールの見直しが相次いでいます。
地政学リスクの火種は各国・地域でくすぶり、民主主義と法の支配に基づく国際秩序も揺らぎ始めています。グローバル経済社会を覆う変化の潮流に乗り遅れた企業はあっという間に競争力を失い、市場から淘汰されかねません。
多くの日本企業はこうした現状に危機感を抱いているでしょう。富士通も同様です。変化の時代をリスクではなく、成長の機会とするため全社的な変革を進めています。変革の先に見据えるのは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスの実現です。
クラウドサービスなどを使い、顧客に寄り添って開発を続け、持続的に価値を提供し続けられるサービス企業になるのが目標です。いわゆる「プロダクト企業」、システムを作って納める従来の業態からの大転換といえます。
簡単ではありません。組織や事業、商品、営業や製造の体制まですべてを見直し、新しい形に変革する必要があります。
「CRO」として改革を進めてきた
変革の打ち手はつなげてきました。変革の道しるべとなるパーパスを作り、製販統合の組織に変えるため事業の構成を見直しました。グローバルのデリバリー体制を変え、人事制度も見直しました。社会課題を起点とした新事業モデル「Fujitsu Uvance」を立ち上げ、オファリングを軸とした営業体制への転換も始めています。
顧客と向き合う人材をコンサルタント志向に変え、コンサルティング事業「Uvance Wayfinders」も始動しました。グローバルで統一された「OneCRM」(CRM=顧客情報管理)、「OneERP+」(ERP=統合基幹業務システム)の稼働など、データドリブン経営への転換も進んでいます。
これらの一連の変革を、私はCRO(チーフ・レベニュー・オフィサー:最高収益責任者)として陣頭指揮してきました。現場の社員、経営幹部を含むすべてのステークホルダーの理解と実践のおかげで少しずつ、変革の成果は出始めています。ただ、変革に終わりはありません。
CROとして不断の変革を富士通に根付かせ、実践し続けることが今現在も課題です。

