会員の強い絆で運営される世界
ゴルフ場には“格”のようなものが存在します。ゴルフ場自体のレイアウトや距離、コースメンテナンスの質やクラブハウスなどの設備、そして接遇などのサービスの質で、我々はそのゴルフ場のランクをなんとなく意識しているものです。
中でもその最高ランクに位置づけられるのが、いわゆる名門ゴルフ場です。「名門」であることに決まった定義はありませんが、筆者なりにその条件を考えると、歴史と伝統を持ち、それを堅持していることと、厳格なメンバーシップによって運営されていることの2点が挙げられます。その意味では、いわゆる高級コースとも少し違っています。豪華なクラブハウスと一流ホテルのような接遇を提供する高級コースの多くは、歴史に誇りを持つ傾向はあまりありません。
位置づけの難しいコースもあります。例えば、川奈ホテル富士コースは1936年に開場し、世界ゴルフ場ランキングの常連で、長くプロトーナメントを開催する日本屈指のゴルフ場ですが、パブリックコースであるため格式張ったところがないリゾートコースです。
オープンな雰囲気があると、あまり名門ゴルフ場という感じがしないのです。裏を返せば、名門ゴルフ場には独特の閉鎖性を感じられるものです。
日本のゴルフ自体がこうした名門ゴルフ場によって成り立っていった経緯があります。日本のゴルフの草創期、とくに戦前のゴルフは上流階級の嗜む社交として生まれました。これらの人々の中には、イギリス留学時にゴルフを覚えた人も多く、その中には昭和天皇も含まれます。まさに本場のゴルフを学び、それを日本でも実践するべく、国内にゴルフ場を設立していきました。そして出自も人物もたしかな同じ階級の仲間たちで構成されたメンバーシップを運用していったのです。
そもそも日本のゴルフを司っている日本ゴルフ協会(JGA)は、24年に全国7クラブの名門ゴルフ場の代表によって創立されたものです。日本のゴルフは、貴族や有力者が中心となったこれらのソサエティによって生まれ、今日に至っています。
名門ゴルフ場はこうした経緯で生まれたこともあり、現在も厳格な入会審査があります。多くの名門コースが、入会時に職業や社会的地位を審査し、コースによっては家族構成などもチェックして、理事会などの承認を経て入会します。これは会員同士の社交の場として、ソサエティの秩序を守り、ともにメンバーとしてプレーする人格や社会的信用を求めているためです。もちろん既存会員の紹介も必要で、厳しいコースではまず仮入会し一定期間メンバーとしてプレーすることで、他のメンバーから承認を受け、晴れて会員となるケースもあります。
かつて日本では誰もが知る大物の新規事業家が、関東のある名門ゴルフ場の入会を断られたことがあります。基本的な入会基準を満たしていても入会できないケースがあるというのは、名門ゴルフ場の性質をよく表しています。
プレーする場合ももちろん簡単ではありません。ネットから予約してそのままプレーができる多くのゴルフ場に対して、名門ゴルフ場では、ビジターでプレーする場合、メンバーの紹介が必要です。紹介するメンバーはドレスコードやマナーなどをそのゲストに守らせる義務があります。
関西のある名門ゴルフ場で、ゲストがゴルフ場内の林の陰で用を足したところ、紹介したメンバーも除名になったというエピソードがあります。紹介があっても前科があるからといって、プレー自体を断ったというケースもあるようです。信頼できる仲間で構成されたソサエティなので、そのルールを逸脱する人にメンバーたちはとても厳しいのです。
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