真夜中の1時から3時頃に「みぞおちから左上腹部」に激しい痛みが起こり、そして背中までも痛くなる。痛みは沈静化する兆しもなく続き、人によっては嘔吐を伴う。朝まで七転八倒し、病院へかけ込む人が多い。

急性膵炎(すいえん)の典型的な症状である。発症のきっかけは「暴飲暴食」「脂肪の多い食事」。痛みは飲んだり食べたりしているときではなく、深夜に起こる。

急性膵炎が重症の場合は多臓器不全などを起こして死に結びつくケースもあるので、早急な対応が必要である。

死にも結びつく“怖い急性膵炎”は、その原因が特定できるのが半数程度で、「アルコール」と「胆石」である。原因がわからないものは「特発性」と呼ばれている。

アルコールが原因のものは30~50代に多く、胆石を原因とするものは40~70代に多いと報告されている。

膵臓は消化液の膵液、血糖値を下げるインスリンや上げるグルカゴンなどのホルモンを分泌している。急性膵炎に関与するのは消化液の膵液である。

膵液は本来、膵臓にあるときは活性化しない。膵液が十二指腸に分泌されると初めて活性化し、食べ物が消化される。

ところが、その仕組みがうまく働かなくなると「自己消化」という事態が起きてしまう。総胆管から十二指腸への出口である乳頭部に胆石が詰まってしまうと膵液がたまり、「自己消化」が起こる。また、アルコールを多量摂取すると膵液が多くつくられ、一方、乳頭部付近の筋肉が収縮し出口が狭くなってしまう。すると膵液が滞り「自己消化」が起こってしまう。

自分の体でつくった消化液で自分の臓器を消化するので、激しい痛みが生じる。

急性膵炎が疑われると、血液検査、尿検査、腹部超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査が行われ、膵臓の状態によって治療が行われる。

軽症、重症に関係なく、入院治療が基本。食べたり飲んだりすると状態が悪化するので、絶飲絶食治療となる。必要な水分と栄養は点滴で補給する。また、痛みを抑えるために消炎鎮痛薬を使う。軽症ならば1週間以内で退院となる。

重症の場合は2~3カ月の入院加療。消化酵素の働きを抑える「たんぱく分解酵素阻害薬」、細菌感染を防ぐ「抗菌薬」、痛みを抑える「消炎鎮痛薬」。このほか、血液中の有害物質を取り除く「血液浄化療法」が積極的に行われる。

胆石に対する治療としては、内視鏡を使って詰まった胆石を取り除く。

【生活習慣のワンポイント】

急性膵炎で問題となるのは3つ、「アルコール」「脂っこい食事」「胆石」。これらの根底には肥満のある点に注目したい。

(1)アルコールは適量を守る!
 飲酒量を“適量”と表現すると、酒好きな人は自分勝手に解釈してしまう。ここでいう適量とは、日本酒なら1合、ビールなら大ビン1本程度である。

(2)脂肪分の多い食事はしない!
 暴飲暴食が引き金になることが多い。食事としては脂肪分の多いもの、牛、豚、鶏肉などの脂肪の多いところ、ポテトフライ、トンカツなどの揚げ物などは極力控え、バランスのいい食事を心がけよう。

(3)コレステロールの多い食事を控える!
 胆石といっても約70%がコレステロールが主成分のコレステロール結石。脂肪分の多い洋食はコレステロールが増えるので、和食中心の食事に――。

(4)3食規則正しく!
 1食抜いたりすると胆のうの胆汁が絞り出されず濃縮され、胆石ができやすくなる。

(5)野菜を十分に摂ろう!
 野菜の食物繊維はコレステロールを吸着して排泄してくれる。