人は見た目が9割といわれる。ところが、よかれと思って取り組んでいるスキンケアが、むしろ老化の原因になっているかもしれない。「皮膚の再生」を専門とする医師に、若々しい肌を保つ方法を聞いた。

“丁寧なスキンケア”で肌が老化していく

シミやしわがどんどん出てきて、肌が黒ずみ、実際の年齢よりも老けて見える――そんな事態は避けたいもの。そのためには日常生活で、次の3つに注意してください。「洗いすぎ」「触りすぎ」「日焼け」です。

紫外線が肌の老化を引き起こすことはよく知られるようになりましたが、「洗いすぎ」と「触りすぎ」についてはまだあまり知られていません。皮肉なことに、肌をきれいにしようと熱心に洗顔料で洗ったり、化粧品を頻繁につけたりすることで、かえって肌を傷つけてしまう人がとても多いのです。

まず、洗いすぎの害について説明しましょう。私たちの肌の表面には多くの「皮膚常在菌」がいます。そのおかげで皮脂や水分のバランスがとれて天然の保湿力が保たれているのですが、洗顔料やせっけんで過剰に洗うと、その常在菌を必要以上に洗い流してしまいます。また、強い物理的刺激で肌のバリア機能が破壊され、水分や皮脂が逃げていき乾燥を招くだけでなく、ひどいときには化粧品の成分や雑菌で炎症が起きます。アレルギーなどの深刻な皮膚トラブルを引き起こす要因になりやすいですし、常に炎症が起きていると炎症箇所が黒ずんでいくので、見た目もよくありません。

肌の乾燥を感じると化粧水やクリームなどをつけたくなりますが、これらの化粧品はその宣伝文句のように「肌の奥まで浸透」することはありません。

私たちの肌は一番外側から、表皮、真皮、皮下組織という順番で層になっています。表皮はさらに角質層(角層ともいう)、顆粒かりゅう層、有棘ゆうきょく層、基底きてい層に分けられます。化粧水などがしみこむのは、一番上の角質層まで。パッケージに「肌の奥までうるおいを届ける」などと書く場合は、「肌の奥とは角質層のこと」などの断り書きを入れることが薬事法で決まっています。スキンケア製品によってうるおうのは、厚さわずか0.02ミリメートルの角質層だけなのです。それも一時的な効果にすぎません。

過剰な洗顔で慢性的な乾燥肌になると、ますます化粧水や乳液などの化粧品に頼りたくなります。これが「触りすぎ」のもとです。

肌は摩擦を受けると、刺激から体を守るために角質層を分厚くしたり、メラニン色素を出したりします。そのため、肘や膝は人体のほかの部分の皮膚と比べて、ざらざらしていて分厚く、黒ずんでいることが多いのです。実は顔の皮膚も触りすぎればこれと同じことが起こります。老化を恐れて熱心にお手入れをすればするほど老化が進むという、皮肉な結果になるのです。

肌を若々しく保つには、「洗いすぎない」「触りすぎない」のがベスト。本来、人間の肌には新陳代謝の機能がありますから、古くなった角質は垢となって自然と剥がれ落ちていくようになっています。これをターンオーバーといいます。表皮のターンオーバーは約6週間サイクルだといわれているので、何もしなくても6週間たてば新しい肌に生まれ変わるということです。つまり、洗いすぎたり触りすぎたりせず、栄養と睡眠をたっぷりとって、ターンオーバーを促すのが一番の老化対策ということになります。

顔を洗わない、何もつけない生活には抵抗を感じるという人は、まずはスキンケアのステップを減らしてみてください。朝晩2回洗顔をしているなら、せっけんを使うのは夜だけにして、朝はぬるま湯ですすぐ。化粧水と美容液と乳液とクリームの4種類をつけているなら、クリームだけにしてみる。それだけで肌の調子がよくなる人は大勢います。

私自身も、患者さんから「先生、肌がきれいですね。どんなお手入れをしているんですか」と聞かれることがありますが、実はせっけんを使った洗顔は週2回しかしていませんし、洗顔後はそのままで、朝に日焼け止めクリームをつけるだけです。気になるときのみ部分的に保湿クリームを軽くのせるように使っています。洗髪はシャンプーを使いますが、週1〜2回程度です。