【寿命を縮める習慣①】
× 高齢者の高血圧は諦める

年をとれば自然と血圧が上がる

近年、メディアでは手軽でキャッチーな健康法が注目されていますが、多くは科学的根拠(エビデンス)に乏しいものです。そこで本稿では、60年以上にわたって1万人以上を追跡した日本の大規模「疫学」研究に基づき、効果が実証された健康法を紹介します。

疫学とは人の病気の原因や予防について、「人の集団」を対象として調査し、解明する学問です。もっと簡略化すると、「医療×統計の実践的学問」と言えるでしょう。多くの人を長年対象にするため、臨床医学で個々の病状に対応するのとは別に、統計学的に精度の高い知見を発見できます。

世の中にあふれている健康情報に惑わされないように、エビデンスのある健康法を10項目に分けて、詳しくご紹介しましょう。

皆さんも、「健康寿命」というワードを耳にされたことがあるでしょう。健康寿命とは、生まれてから死亡するまでの寿命に対して、「人生のうち、日常生活を健康に過ごせる期間」のこと。日本人の場合、平均寿命よりも、健康寿命が10年ほど短いことが明らかになっています。つまり、死亡するまでの約10年間、寝たきりや要介護状態の日本人が多いというわけです。

健康寿命を縮める原因はさまざまですが、疫学研究からは、「高血圧が最大原因」ということがわかっています。日本人が要介護状態になる原因の第1位は認知症、第2位は脳卒中ですが、どちらも高血圧が重要なファクターだからです。

高血圧は、脳卒中や心臓病といった循環器疾患との関係が極めて深いと言えるでしょう。とりわけ、脳卒中のうち、脳血管が破れる「脳出血」の要因となります。

また、認知症のうち、アルツハイマー型認知症に次いで多い「血管性認知症」は、脳卒中や脳動脈硬化によって引き起こされるのです。血圧の正常値は収縮期が130mmHg未満、拡張期が85mmHg未満ですが、高血圧を正常値まで戻せば、脳卒中の約4割が防げると推察されています。さらに、高血圧の人は、認知症のリスクが2倍近くに上昇します。

とはいえ、「年を取れば、血圧がある程度高くなるのは自然な現象」という説明も、皆さんは聞いたことがあるのではないでしょうか。

確かに血管が硬くなった高齢者は、ポンプ機能を高めて血液循環を維持するため、血圧が高くなるケースが少なくありません。しかし、年齢には関係なく、「血圧は低いほうが健康上は望ましい」というエビデンスが示されているのです。

疫学研究によると、70代まではすべての年齢で、血圧が高いほど死亡率が上昇するという結果が出ました。80代以降は、収縮期血圧が140mmHgくらいまでなら、死亡リスクの大きな変化はありませんが、それ以上になると要注意です。