さまざまな学部生たちの実学教育の場としてお店を利用
「グランフロント大阪に出店したお店の役割は、大きく分けて2つあります。1つは、研究成果の発表の場として。そしてもう1つは学生たちの実学教育の場として活用したいのです」
そう説明するのは、近大の人事部長を務める逵(つじ)浩康さん。近大マグロなど、養殖魚の販売を行う株式会社アーマリン近大の代表取締役でもある。
研究成果の発表の場という意味は明白だ。32年もかけて成功した養殖マグロの味を、どうぞ堪能してくださいということだろう。では、学生たちの教育の場とはどういう意味なのか。
「たとえば、お店で使用される皿やガラスの器の一部は、文芸学部芸術学科の学生たちが作ったものなのです。普段の授業では課題を与えられ、ある意味で自分のためだけに創作していた学生たちが、お客さんに使ってもらう皿や器を作ることを通して、さまざまなことを学んだはずです。
また、農学部食品栄養学科の学生たちは、オープン前の試食会でメニューの栄養価計算を行い、栄養バランスについて料理長と話す場を持ちました。栄養士の資格を取ろうという学生ばかりなので、いずれは健康によい定食メニューなどの開発にも取り組んでもらうつもりです」
オープン時には間に合わなかったが、そのほかにも建築学部の学生たちが内装をリニューアルするときに設計を行ったり、経営学部の学生たちが消費者動向を学んだりと、実学の場として利用するアイデアは尽きない。就活シーズンを迎えた学生たちが、就業体験をするインターンシップの場として使うのもありだろう。13もの学部を持つ、総合大学ならではの試みだ。
この店が成功すれば、東京での出店も検討しているという。
(堀 隆弘=撮影)