※本稿は、佐野敏高『ワインビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
良年のワインは壮大なスケールを持ち、感動的な味わいを生む
どんなワインでも栓を抜いたタイミングこそが、僕らにとっての飲み頃です。それでも、ワインをどのように適切な状況で飲むかを考えるのもまた楽しみのひとつです。
ワインたちは長い船旅を経て日本へ輸入されます。船旅に屈強なワインもあれば、繊細なワインもあり、それぞれが異なるペースで「飲んでほしい瞬間」を迎えます。
船旅の疲れが癒えた頃には、生産者が飲んで欲しい味わいが見事に表現されているのです。現地で飲むからこそおいしいワインも存在します。
ショップに並んでいるワインは、基本的にひとつの飲み頃を迎えています。生産者は、味わいがまとまってからボトリングするのが一般的です。それでももう少しの時間が必要な場合、インポーターが追熟させてからリリースすることもあります。
・閉じているワインと開いているワイン
味わいが出ていないワインを「閉じている」、豊かに表現されたワインを「開いている」と表現します。どちらが良いかではなく、タイミングによってその魅力が異なるのです。
・季節や気候とワイン
ワインは一定温度で保管されていても、季節の変化を感じているかのように呼吸している気がします。ワインにも飲んで欲しいタイミングと、飲まれたくないタイミングがあるのだと想像してみてください。
ワインには「良年」と「悪年」という生産年の評価があります。良年とは、天候やブドウの出来ばえが理想的で、生産年の評価が高い年のこと。
良年のワインは壮大なスケールを持ち、感動的な味わいを生みます。熟成された姿は荘厳な建築物をおもわせるような世界観を生みます。
それに対して悪年とは、気候条件が悪く、理想的なブドウが収穫しづらかった年を指します。ただし、悪年の評価は相対的なもので、生産者の努力次第で素晴らしいワインが生まれることがあります。

