ワイン選びで気をつけることは何か。ソムリエの佐野敏高さんは「ワインには良い商売になる商品が比較的簡単に入手できるため、並行ワイン市場が存在する。並行品については、一度格安ネットショップで叩き売られている低価格の有名ワインを購入し、飲んでみることをおすすめする」という――。

※本稿は、佐野敏高『ワインビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

ワインボトル
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並行品輸入のワインをソムリエが「偽りの市場」と言うワケ

ワインを選ぶとき、もしかするとつい表ラベルのデザインや名前に惹かれて選んでいるかもしれません。でも、実は裏ラベルを見ることが大切です。

僕は尊敬するお取引先が扱うワインを心から愛し、その想いを込めてお客様へ提供しています。なぜなら、それを輸入するインポーターの方々のワインへの情熱を感じ取れるからです。そして、その想いをお客様にも届けたいと願っているからです。

さまざまなジャンルの製品において、正規代理店輸入と並行品輸入という異なる流通経路が存在します。ワインの場合、この区分が少し厄介なことを引き起こすことがあります。

どのような問題があるか、輸入商社の視点、消費者の視点で考えてみましょう。並行品は偽造品とは異なりますので、混同しないようにしてくださいね。

並行輸入ワインとは、ワイン生産者と直接取引関係を続けている正規輸入業者以外のワイン輸入業者、またはワイン小売店が並行市場で仕入れたワインたちのことをいいます。

並行ワインを専門的に取り扱っている業者は世界に存在します。生産者と正規の取引関係にある業者や個人から、直接または間接的にワインを買い取っているケースもあります。

並行ワインの問題点は、輸入される前にワインがどのような環境に置かれていたかがわからないことです。温度管理がされていたか、適切な場所で保管されていたか調べることができないのです。僕は偽りの市場と言っています。

信頼のある場所から買い付けたと言えば、情報のない僕たち消費者は騙されてしまいます。つまり状態に対しての保証のないワインなのです。

どんなに高価だったとしてもロマネ・コンティ社のワインを入荷しました、と案内があればブランド化されたワインに対して、味わいとは別軸の需要が生まれます。たとえそれが並行品であっても、ワインの状態が良いのか悪いのかわからなかったとしても。