1週間前

大野さんが映画に主演するという話が、小林氏の耳に最初に入ったのは11年5月。そこから承認会議1週間前までは、コラボの企画を揉んでいく期間だった。

「企画を練るうえで大切なのは、社内外の関係者とのコミュニケーション。自分たちだけで一方的に進め、会議本番でNGを出されたら、発売スケジュールに間に合いません。映画公開と時期を合わせるためには、会議の前に関係者と打ち合わせして、会議本番で100点をもらえるところまで練り上げておく必要があります。いわゆる根回しですね」

関係者と詰めておくべき課題は山積みだった。まず悩んだのは香りだ。怪物くんはカレーが大好物だが、カレーの香りのボディソープではミスマッチ。最終的に発売時期に合った素材ということでストロベリーが選ばれた。パッケージのデザインも難航した。デザインは、とくにこだわりのある部分だったという。

「詰め替え用だけでなく、ボトルにもキャラクターを入れたかった。ボディソープはお客様の回遊率が高い商品ですが、ボトルを購入していただければ、同じブランドの詰め替え用商品を買っていただける確率は高まります。ここは社外との交渉でしたが、確実に超えていかなければいけないプロセスの1つでした」

小林氏が心がけていたのは、複数の提案を用意することだった。

「あるデザインに関係者が難色を示したとします。そこからデザイナーに新しいものを発注していたのでは、とても間に合わない。そこで最初から複数案を提示して互いに合意点を探っていくのです」

通常商品の場合、デザインは3パターンほど用意する。しかし今回は約20パターンを用意。それでも時間的にはギリギリだった。

「複数提案はデザインに限った話ではありません。各関係部署との根回しでも、いくつかの案を打診してそれぞれの感触をつかみ、それを企画にフィードバックしていく。とくに今回のように期限が動かせないプロジェクトは、複数の要素を並列で進めることが重要だと思います」