“マスク・ファースト”とまでいわれていたが…
つい最近まで、蜜月関係を誇ってきた、トランプ氏とマスク氏の決裂が決定的になっている。6月5日、トランプ大統領はマスク氏を激しく非難し、マスク氏の関連企業との契約解除も示唆した。
大統領選挙前、トランプ氏とマスク氏は、お互いの損得勘定で接近し関係を深めたとみられる。両者にとって、重要なメリットがあるとみたからこそ関係は密になった。そうでなければ、保守本流のトランプ氏と、新自由主義的な考えを持つマスク氏が接近することは考えにくい。
2024年7月、マスク氏は大統領選挙でトランプ氏を支持すると表明した。献金額は3億ドル(1ドル=140円換算で420億円)に上ったようだ。それは、トランプ氏が再選を果たすために重要だった。一方、マスク氏は、トランプ氏が大統領になった場合、テスラの自動運転車の実用化やスペースXが運営する“スターリンク”事業への国家支援など、相応の恩恵が手に入るとの計算があったのだろう。特に、宇宙政策でトランプ政権は“マスク・ファースト”と評されたこともあった。
関税政策がテスラの不買運動を招いた
マスク氏にとって想定外だったのは、トランプ氏の政策が、マスク氏のビジネスの阻害要因になる恐れが出たことだろう。トランプ政権の関税政策は、テスラの不買運動につながった。また、一時はマスク氏が主導すると思われた、米国の宇宙開発でも恩恵が予想したほど大きくなりそうにない。
すでに、テスラの中国での販売が減少傾向だ。欧米諸国でも、テスラの販売台数は頭打ち傾向を示している。スペースXなどの事業も、思ったような業績を上げることができていない。マスク氏が率いる企業グループ全体に停滞感すら出ている。トランプ氏と決裂したマスク氏が、今後、どうやって事業を立て直すか、同氏の手腕が問われる。