「声の大きさよりも愛嬌です」とインタビューでは答えていたが、それは嘘だった。やっぱり最後は大声と気迫だったのである。
「最後は私が売る」という気迫のこもった声が続き、吸い寄せられるように客がカツサンドを手に取った。
客がカツサンドを彼女に渡す。それまで気迫がみなぎった顔をしていたのが、売れたと決まった瞬間、にっこりした。その落差がまた激しい。夜叉のような顔だったのがお客の1人がつけたあだ名「ピーチちゃん」に変わった。
「ありがとうございます」と言いながら、頭を下げ、また腹の底から「まいせんでーす」と絶叫した。
世の中は厳しい。不況はまだまだ終わらない。だが、デパ地下の女王は、いまよりもなお不景気になっても生き延びるに違いない。
サービス業のプロとは、「目の前の人が望んでいることをやる人」であり、しかも「やらずにはいられないからやってしまう」人だ。自分のなかにあるものに突き動かされて行動に移ってしまう人だ。
だから、迫力が違う。サービスは気配りだけれど、販売は気迫だ。
※この連載は『プロフェッショナルサービスマン』(野地秩嘉著、プレジデント社)からの抜粋です。
(構成=プレジデント書籍編集部)