子どもが「どうしてもやりたい!」「あれがほしい」と言い出して聞かないときには、どうしたらいいのか。9歳、7歳、3歳の息子を育てる、ハーバード大小児精神科医の内田舞さんは「『本人の願いをいったん受け止める』『問題解決や意思決定の一端を子どもにも担ってもらう』『子どもの思いに共感する』という三つを組み合わせると、双方が納得できる結果に着地しやすいように感じる」という――。(第2回/全3回)
※本稿は、内田舞『小児精神科医で3児の母が伝える 子育てで悩んだ時に親が大切にしたいこと』(日経BP)の一部を再編集したものです。
子どもが言うことを聞かない時はどうするか
子どもが小さい時に遭遇することの多い、つい「こっちにしなさい」「我慢しなさい」など、頭ごなしに言い聞かせようとしてしまいそうなシチュエーション二つについて、我が家でうまくいった(うまくいきそうだった)対応方法をご紹介します。
「どうしてもあの風船がいい!」と聞かない息子
数年ほど前、息子と近所のお祭りに行った時のことです。何かの景品で、風船を一つ、もらえることになりました。対象の風船は二つあって、どちらか一つがもらえます。同じ色、同じ形や大きさでしたが、一つは手の届く近いところにあって、もう一つは届かないところにあります。でも息子はなぜか、どうしても取りにくい方の風船がほしいと言って聞きません。
「手前の風船にしなさい!」と言いそうになったのですが、「ここで頭ごなしに叱って近い方の風船を選ばせても、この子は多分納得しないだろうな。余計に意固地になって遠い方の風船に固執して、泣いたり癇癪を起したりするかもしれない」と思いました。それでまずは、彼の思いを受け止める努力をしてみたのです。
「ママには、どっちの風船も同じに見えるけど、あなたにはきっと、何か違うように見えるんだね。あっちの風船のどんなところが好きなの?」
「色とか、結び目とか、ひもとか……」
どう見ても同じにしか見えないと思ったのですが、「そうなんだ。色とか結び目とかが違っていて、こっちの風船よりもあっちの方が好きなんだね」と答えました。そうしているうちに、お店の人が机の上にのぼって風船を取ってくれました。

