なぜ死を怖いと思わなくなったのか

子どもの頃は、死ぬのが怖くてしかたがなかった。僕は幼い頃に横尾家に貰われてきた養子で、養父母は僕が20歳になる頃には生きていられるかわからない年齢でした。両親が死んだら僕は一人ぼっちになってしまう。そのことと、毎晩のように飛来してくるB29がおそろしくて、夜になると布団の中で震えていました。

ところが、実際に両親が亡くなってしまうと、僕はものすごく解放された気持ちになりました。僕がおそれていたのは両親の死であって、死そのものではなかったのです。そうして自分の死だけが残って、僕は死と真正面から向き合えるようになったのです。