「高齢者を標的にした振り込め詐欺は、いまも深刻な社会問題です。しかし高齢者はインターネットをあまり使いませんから、インターネットバンキングの詐欺事件は、まだまだ“芽”の段階にあると思います。被害が深刻化するのはこれからでしょう」

神田将弁護士はこう予言する。事実、11年秋には三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行のインターネットバンキングで、不正送金による被害が発覚した。芽が幹に育つおそれが出てきたのだ。

被害額は三菱東京UFJで計数百万円(6件)、三井住友で計約1000万円(6件)。ある被害者は、1つの口座から200万円を盗られていた。

「インターネットバンキングの利用者の多くは、1日の送金限度額を100万円に設定しています。この被害者は、2日に分けて100万円ずつ“抜き取られて”いたのです」(関係者)

なぜ、不正送金ができたのか。

「これはフィッシング詐欺の1種です」と神田弁護士はいう。詐欺師らは利用者に銀行当局を装う偽メールを送りつけ、偽の銀行サイトへ誘導して個人情報を入力させるという手口で、IDやパスワードを入手したのである。

クレジットカードの不正利用にも注意が必要だ。

「ネット上ではカード番号と有効期限さえ打ち込めば、かなり自由に買い物ができます。だからネットでの利用には慎重になるべきです。怪しいと思ったら、カードは使わず着払いなどを選択するといいでしょうね」(神田弁護士)

もっとも、カード会社は顧客の購買行動をモニターし不自然な動きがあれば当人に問い合わせるので、不正はすぐに発覚する。言葉を換えれば、そうした努力により、大きな問題になるのを水際で防いでいるというのが実情なのだ。

茅場町総合法律事務所 弁護士 神田 将
1963年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。98年、司法試験合格。著書・監修書として『図解による民法のしくみ』『インターネットの法律とトラブル解決法』などがある。
(久保田正志=構成 浮田輝雄=撮影)
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