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子づくり拒否より、セックスレスが慰謝料請求の原因になる可能性が

身体的に性交渉が不能で、それに不満を抱いた配偶者が離婚を求めた場合はどうだろう。結婚後、婚姻関係が継続している途中で性交渉ができなくなった場合は、離婚原因になる可能性があるが、慰謝料を請求する原因になるかどうかは疑問だ。ただし、結婚時から性交不能で、その事実を相手に告知せず結婚し、苦痛を感じた配偶者から訴えられた場合は別である。離婚原因になるのはもちろん、事前に告知しなかったということが、慰謝料請求の原因になりうる。

性交渉自体はあるものの、態様や頻度に不満があるという場合も考えられる。頻度については何ともいえないが、態様という点では、例えば一方に異常な性癖があり、それが相手に苦痛を与えた場合などは、離婚原因にもなるし、慰謝料請求原因にもなる可能性がある。ただ、この点については客観的な判断基準が難しく、証明するのが困難であるのも事実だ。

さらに、性交渉の有無にかかわらず、一方の配偶者が不妊症で子供ができず、そのことについてもう一方の配偶者が不満を持つようになったという場合。慰謝料請求の原因になるかどうかは微妙だが、離婚原因に該当する可能性はある。ただし、結婚時から不妊症であることがわかっていたのに、隠して結婚した場合は、2つ目のケースと同様、事前に告知しなかったという事由があるので、慰謝料請求の原因になる可能性がある。

慰謝料額の相場は、通常100万~300万円程度で、事案の特性から500万円とされた例もある。また、財産分与も請求できる。

このように、いわゆる「セックスレス」に関しては慰謝料を請求できる可能性があるが、配偶者の一方が子供をつくりたがらない、ということだけを理由に慰謝料まで請求するのは容易ではない。仮に拒否されたほうが訴訟を起こしたとしても「子供が要らない」と思うような状況を招いたのがどちらの配偶者に責任があるのかといったことにより判断されるだろう。実際、訴訟に発展するようなケースでも、1つに限らず、複数の理由が重なり合って結婚生活が破綻したという場合がほとんどである。したがって、答えは1つには絞りきれず、ケース・バイ・ケースであるとしかいえない。

(構成=鈴木雅光)
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