夫婦であっても、お互いに独立した個人ですし、相手は自分の所有物ではありません。互いに家庭外の生活や秘密事項があって当然ですし、携帯電話の行動履歴や通信履歴は個人のプライバシーの一部です。

したがって、妻が夫の同意なしに携帯メールをチェックした場合、プライバシー侵害として損害賠償の原因となることがあります。これはケースにもよりますが、夫婦であろうが他人同士であろうが原則的には同じです。

もちろん、行動監視ツールなどを夫の携帯電話やスマートフォンにこっそりインストールして利用するのも違法になります。

その行動監視結果を不用意に第三者に公表した場合には、名誉毀損が成立し、損害賠償や処罰の対象となることもあるでしょう。

行動監視ツールは、(1)本人の同意がなければ物理的にインストール不可能な仕様になっており、かつ、(2)現に本人の同意があるのでない限り、違法なスパイウエアの1種として扱われます。

そして、刑法上では、不正指令電磁的記録の作成罪、提供罪、供用罪、取得罪、保管罪(刑法168条の2、168条の3)として処罰されることがあります。

さらに、行動監視ツールがクラウド型のときは、サービスを提供しているプロバイダについて電気通信事業法違反(通信の秘密を侵害する罪)が成立することがあります。

例外として、一方の配偶者が認知症等の病気になり、他方の配偶者がその後見人になっている場合があります。後見人は本人の代わりに行動できますし、本人は正常に同意をすることができないので、このような場合には同意なしにインストール、利用することができます。

携帯電話にセキュリティ・ロックがされている場合はどうでしょうか。

まず、通信回線を通して密かにロックを解除し、監視ツールをインストールした場合には、不正アクセス罪が成立することがありえます。ただし、これは通信回線を通した場合のみ。奇妙なようですが、モバイルを直接操作した場合には、不正アクセス罪にはなりません。