「銀座に御社のネオンサインがありますよね。あれが虫食いみたいに切れているのをご存じですか。何億円もかけて、うちの製品は不完全であると宣伝しているのと同じですよねえ」

ネオンサインという言葉が現役だったころ、K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院主任教授の三谷宏治氏は電機メーカーを訪問してちくりということがあった。外から見ると明らかに問題があるのに、セクショナリズムが邪魔をして、すぐには解決できないようになっている。そんな“病状”に気づいてもらおうと、あえてわかりやすい事例を取り上げたのだ。

「おもしろいけど、よく聞くときつい皮肉だよね」

相手にはこう苦笑されるが、正面から問題点を指摘するよりはましである。反発を買わずに問題点を意識させる、なかなか高度なテクニックなのだ。

それとなく苦言を呈するのは厄介だが、人を褒めるのも意外に難事である。

ライオンの新人時代、日本コカ・コーラ元会長 魚谷雅彦氏は泥臭い「同行販売」を重ね、卸業者の懐へぐいぐい入り込んでいくことを得意とした。朝、いつものように大阪にある中堅卸を訪ねると、社長が自分の部屋へ手招いた。

「魚谷君、これ読んでみい」

机の上に、当日のスポーツ新聞が開いてあった。地元・阪神が勝ったという内容で、勝利投手の写真とともに、彼をたたえる大見出しが躍っていた。

「『一球入魂』って書いてありますね」
 「君はアホか。これは一球『じっこん』て読むんやで」

急に叱られたのでびっくりしていると、社長は続けてこういった。

(撮影=的野弘路)

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