燃費がよく馬力が強い。しかも燃料の軽油はガソリンより安い。そのため欧州などで人気が高いのがディーゼル車だ。しかし、かつてのNOxや煤煙問題が尾を引き、国内では各メーカーとも乗用車のラインアップからほとんど外してしまっていた。
そんななか、マツダは燃焼タイミングの最適化などで排ガスのクリーン化と燃費改善を同時に実現し、「燃費がよく、排気がきれいで、トルクがあるので走りも楽しめる」(人見氏)という次世代型のディーゼルSUVを売り出したのだ。
といっても、人見氏はガソリンエンジンの専門家。燃焼の仕組みやエンジン構造が異なるディーゼルについては門外漢といっていい。しかし、ディーゼルエンジンを手がけると決まったときから、人見氏の頭脳はディーゼル技術の問題点をサーチし、たちまちのうちに「解決すべき点」を見抜いて以下6点に整理してしまった。
「圧縮比」「空燃比」「燃焼期間」「燃焼タイミング」「ポンピング損失」「機械抵抗」である。
6項目を1つひとつ解決していけば、動力にならず宙に消えている燃焼エネルギーのうち、多くの部分が有効に活用できるようになるという。すべてクリアすれば、それが「理想の内燃機関」ということになる。
「この6点に分類整理したのは、自動車業界で人見が初めてだといわれています」
技術広報を担当するU氏が教えてくれた。
ハイブリッドなにするものぞ!
さて、ハイブリッドなみの驚異的な低燃費を実現したデミオ・スカイアクティブGのことである。
07年3月、マツダは「燃費30%改善」を柱とする開発方針を打ち出した。当初12年実施とされていたEUの新しいCO2規制をクリアするためだ。
ハイブリッド車の販売比率を高めることで規制に対応しようとするメーカーもあるなかで、マツダの方針は野心的だった。エンジンの燃費向上を最優先し、そこにアイドリングストップやハイブリッドなどの技術を付加することで最終目的に達しようというのである。