奇怪なモノも…奇跡の水、キノコ、植物の種、農薬から作った新薬
誰かに何かしてもらったとき、その人にお返しをしようとすると人生を縛られてしまう。「借り」は必ずしも本人ではなく誰かに返せばよい。そうするだけで人生はラクになる。
人間はひとりでは生きられないから、あらゆる場面で人の助けを借りることになる。
問題は、その借りをどのように返すか、だ。多くの人が、助けてくれた人に借りを返そうと行動するのだが、そうすると人生が縛られてしまう。
年賀状を考えると、わかりやすいかもしれない。家に届いた年賀状すべてに返信をすると、次の年は、より多くの年賀状が来るようになる。それにすべて返信をすると、翌年は、さらに年賀状の数が増えて、やがて身動きが取れなくなってしまうのだ。
年賀状ならまだしも、これがお中元とかお歳暮だと、必要な費用がどんどん増えて、生活を脅かすことになりかねない。
私のガン罹患が明らかになったあと、私のところにはお見舞いや、治療のアドバイスのメールが殺到した。前述したようにその数は軽く2000通を超えた。私は原則として、1回だけはお礼のメールを出したが、2回目以降は一切返信しなかった。そんなことをしたら、どんどんメールが増えて、その対応だけで時間がなくなってしまうからだ。
もっと困ったのは、いろいろなものを送ってくれる人がたくさんいたことだ。なかでも、送り主が「ガンの治療に役立つ」と信じているものが、山のように届けられた。
健康になる奇跡の水、重曹とビタミンC、ニンニク、サプリメント、キノコ、海藻、キチン・キトサン、植物のタネなど、種類はさまざまだ。なかには得体の知れない液体をボトルに詰めたものとか、農薬から独自に作った新薬などというものまであった。
もちろん、得体の知れない液体を飲むわけにはいかない。正直に言うと、私は送られてきたものを口にすることはなかった。
見ず知らずの人から送られたものを体のなかに入れるのが怖かったし、効果を確信することもできなかったからだ。