駅伝版の社会人vs.大学生のバトル。今週末に初めて実施される「エキスポ駅伝」で注目なのは、やはり箱根駅伝連覇で乗っている青学大の動きだ。原晋監督は実業団チームを挑発する発言をするなどして盛り上げに躍起だが、レースの結果やいかに。スポーツライターの酒井政人さんが戦況を予想する――。
箱根駅伝最終日、優勝しポーズをとる青学大の原晋監督=2025年1月3日、東京・大手町
写真提供=共同通信社
箱根駅伝最終日、優勝しポーズをとる青学大の原晋監督=2025年1月3日、東京・大手町

青学・原晋監督「大学と実業団がガチンコ対決する画期的な駅伝」

3月16日に「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」(以下、エキスポ駅伝)が初めて開催される。実業団vs.大学、駅伝ではほとんど混じることのない両者の激突はファンにとっては“夢のカード”である。

その“戦い”はすでに始まっている。今年の箱根駅伝で連覇した殊勲のメンバーが2月以降の国内の大きなマラソン大会でも存在感を大いに見せつけた青山学院大・原晋監督の“口撃”がとまらないのだ。

スポーツ紙の報道によると、1月23日に行われた第101回箱根駅伝優勝報告会のメディア対応で、エキスポ駅伝を欠場するHondaをこう批判した。

「エキスポ駅伝は大学と実業団がガチンコ対決する画期的な駅伝です。テレビ、ラジオで生中継されるし、大阪のど真ん中の御堂筋を走ります。そんな大会になぜホンダは出ないのか? チームというよりも、ホンダの経営陣に問いたい。こんなに目立つ大会になぜ出ないのでしょうか。なぜ、駅伝チームを持っているのでしょうか」

実に原監督らしい発言である。なるほどそうだな、と思う部分と、もう少し冷静になったほうがいいかな。というのが、筆者の率直な感想だ。

エキスポ駅伝は実業団チームと大学チームが「日本一」を争う大会という趣旨で行われるが、決して大会の“権威”があるわけではない。むしろエキシビションマッチに近いといえるだろう。

大学は昨年11月に行われた「全日本大学駅伝」で入賞した國學院大、駒澤大、青学大、創価大、早稲田大、城西大、立教大、帝京大と関西学連選抜の9チーム。実業団は元日の「全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)」で上位に入ったトヨタ自動車、GMOインターネットグループ、住友電工、富士通、安川電機、ロジスティードと実業団連合選抜などのチームだ。

大学側は全日本大学駅伝のトップ8全校が集結した一方で、実業団側はニューイヤー駅伝2位のHondaだけでなく、同5位のSUBARU、同7位の三菱重工などが出場要請を“固辞”したかたちになっている。

さらに直前になって、ニューイヤー駅伝王者の旭化成と、日本陸連シニアディレクター(中長距離、マラソン担当)の高岡寿成氏が監督を務めるKaoが「12人のエントリー選手において、体調不良や故障によるコンディション不良でオーダーを組めなくなったため」(大会主催者)に出場を辞退することになった。

そもそも実業団と大学は目指すべきステージにズレがある。

エキスポ駅伝は大阪万博の会場だった万博記念公園をスタートし、大阪・関西万博の会場となる夢洲周辺をゴールとする全長約55km、7区間で争われる。陸上長距離選手にとって、3月中旬はロードからトラックへの移行期間で、開催時期としては悪くない。

しかし、今年に限っては事情が少し異なる。9月に開催される東京世界陸上の代表選考会を兼ねた日本選手権10000mが4月12日に行われるからだ。また同選考会でもある大阪マラソン(2月23日)と東京マラソン(3月2日)が終わったばかりだ。

10000mとマラソンで世界大会を本気で目指している選手が多いチームはスケジュールを考えると、エキスポ駅伝に準備万端で向かうのは非常に難しいだろう。欠場を選択するチームが出てきても不思議はない。また言葉を選ばずにいえば、実業団にとっては大学と戦うメリットはほとんどないのだ。