青学大とHondaはどちらが強いのか?

では日本人選手だけでガチンコ対決したらどうなるのか。エキスポ駅伝は1区8.9km、2区5.1km、3区12.5km、4区5.4km、5区10.1km、6区4.7㎞、7区7.8㎞。青学大と名指しで原監督が批判したホンダ(今大会は不出場)の戦いをシミュレーションしてみたい。

※青学大はエキスポ駅伝のエントリーに関係なく在学中の選手で構成。
※名前横のタイムは5000m or 10000mの自己ベスト。

青学大Honda
1区 鶴川正也(13分18秒51)/森凪也(13分16秒76、中央大卒)
2区 宇田川瞬矢(13分37秒77)/青木涼真(13分21秒81、法政大卒)
3区 黒田朝日(27分49秒60)/伊藤達彦(27分25秒73、東京国際大卒)
4区 野村昭夢(13分33秒88)/小袖英人(13分22秒01、明治大卒)
5区 太田蒼生(28分20秒63)/小山直城(27分55秒16、東京農業大卒)
6区   折田壮太(13分28秒78) /中野翔太(13分24秒11、中央大卒)

7区 若林宏樹(27分59秒53)/川瀬翔矢(27分55秒97、皇學館大卒)

1区は僅差の戦いになると予想するが、2区以降は、数字上はホンダのほうが明らかに強い。青学大は箱根駅伝に滅法強いが、出雲駅伝や全日本大学駅伝ではなかなか勝つことができていない。この距離の駅伝ではホンダのスピードに完敗するだろう。

駅伝というかたちではないが、昨年の日本選手権5000mで両者はガチンコ対決している。

ホンダは伊藤達彦が13分13秒56の大会新で制して、森凪也が13分16秒76で2位に入り、ワン・ツーを達成。小袖英人が7位(13分22秒01)、中野翔太が14位(13分36秒46)に入っている。一方の青学大は鶴川正也の4位(13分18秒51)が唯一の入賞で、黒田朝日が19位(13分40秒18)、折田壮太が28位(14分15秒00)だった。

5000mで日本一を決める舞台でもホンダが青学大勢に圧勝している。正直なところ、青学だけでなく、大学×実業団の実力差は明らかだが、駅伝は何が起こるかわからない。

持ちタイムとしては敗色濃厚であることは原監督自身も熟知しているはず。それでも「陸上界を盛り上げよう」との思いで、いわばヒール役を買って出ている。気になるのは、その原監督の言葉に実業団チームが沈黙を貫いていることだ。原監督ほどメディア露出が多くないこともあるが、誰かバチンと言い返してもいいのではないだろうか。バトルの様相になればネットなどで話題になり絶対に大会が盛り上がるからだ。そうした話題作りが下手クソであることが陸上という競技が地味に見えてしまう要因とも言える。

筆者は、実業団チームの監督で今回とは別の案件で取材を申し込んだ際、「練習に集中したい」という理由で断られたことが何度かある。総じて実業団の監督はメディア露出よりも、ニューイヤー駅伝で結果を残すことと、世界大会に出場することに注力している、といった印象だ。

原監督は、「日本の長距離の強化の柱は駅伝でしょう。もし『世界を目指す』というのなら、世界で結果を残していますか、と問いたい」とも話しているが、世界大会で結果を残すのは、箱根駅伝で勝つより難しい。

箱根駅伝は夏の甲子園と同じで、たとえその年の全体的レベルが低くても優勝校が必ず誕生して、ヒーローも毎年のように登場する。しかし、世界大会は毎年あるわけではなく、“日本新記録レベル”のパフォーマンスを発揮しても上位に食い込めるとは限らないからだ。

と、立場によって思惑や目標は異なる者たちが集まって実施されるエキスポ駅伝。もし盛り上がったら、実業団チームは、同駅伝を自身の知名度を駆使してPRしてきた原監督に感謝しないといけないだろう。

なお、レースは3月16日の午前8時30分からテレビ朝日系列で全国生中継される。

データ上は不利な青学が“ジャイアントキリング”を起こすのか、他の伏兵大学が格上の実業団に一矢報いるのか。一方の実業団は先輩のメンツを保つのか、それとも勝って当たり前の重圧に屈するのか、学生相手に油断して足元をすくわれるのか。

選手のコンディションや、沿道のファンの後押し次第では、学生が卒業間際の4年生中心に若者らしい「バカ力」で大番狂わせを見せる可能性もゼロでないはずだ。

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