“曖昧フレーズ”連発の同僚が変貌した瞬間

そんなある時、現地のアメリカ人から「日本の本社では、普段どうやって会議をやってるんだ?」と質問されたことがありました。

どう答えてよいかわからず私が戸惑っていたところ、会話を聴いていたその同僚が代わりに回答してくれました。以下、実際の回答はもちろん英語ですが、今回は日本語で記載します。

「まずは会議をやる前に、会議の目的を明確にする」
「目的の達成に必要な情報を、事前に集めておく」
「それらを資料にまとめるか、ホワイトボードに集約しておく」
「会議開始後、まずは資料やホワイトボードを見てもらいながら説明する」
「そうやって会議参加者と共通認識をつくってから、実際に話し始める」
「途中で話がそれたら、資料やホワイトボードを指さす」
「今の論点はここだから、と言って会議の軌道修正を図る」、等々。

日本語だとあんなに曖昧な表現を多用していた同僚が、英語になると別人かのように明解に説明し始めたのです。

何より、この内容はまさに「“名ファシリ”とは何か」について、解像度を高めたものになっていました。

グラフやチャートが表示されたタブレット端末などを用いて、ディスカッション中
写真=iStock.com/ijeab
※写真はイメージです

外国人に伝えるつもりで日本語を扱う

この例に限らず、「日本語だと何が言いたいか不明瞭だが、英語にしてもらうと途端に解像度が上がって、やるべきことが明確になる」といったコミュニケーションを、アメリカ赴任中に何度も経験しました。

実際、トヨタで働く人たちは「言葉の解像度を上げる」能力に長けた人たちばかりでした。上記エピソードに登場した同僚もこの力自体はあったわけですが、それでも日本語だと、どうしても日々のコミュニケーションを曖昧に済ませてしまいがちだったのです。

そんなとき、「できるだけアメリカ人も交えて英語でコミュニケーションする」というアプローチは非常に有効でした。さらにその後、日本人同士の会話でも「ローカルの人に話すつもりで、日本語の時も伝えてくださいよ」といった働きかけをすることで、以前より解像度を上げて説明してもらえる場面が劇的に増えていきました。

こうした原体験を踏まえ、組織として「言葉の解像度を上げる」能力を高めるためには、まずもって外国人材を積極的に採用し、明解なコミュニケーションを図る機会を増やすことが効果的だと私は考えているのです。