中学受験の本番で力を出せる子は、普段どんな学習をしているのか。プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康さんは「近年では『その場で考えさせる問題』が中堅校でも増えている。こういった問題に対応するために重要なのは、始めての問題に出会ったときに、ただ公式を使うのではなく、納得感を持って理解することだ」という――。
食卓
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

中堅校の入試の難化が進んでいる

近年、首都圏の中学受験は偏差値50前後の中堅校に人気が集まっている。以前は「中学受験をするなら、できれば偏差値の高い難関校へ」と考える家庭が多かったが、受験者数が増えたことで学力のレベルが広がったこと、また、「中学受験でムリをさせたくない」と考える家庭が増えてきたことが大きい。

だが、中堅校だからといって甘く見てはいけない。なぜなら、近年の中堅校入試は、塾のテキストにあるような問題がそっくりそのまま出題されることはないからだ。一見、同じような問題に見えても、質問の仕方を変えていたり、条件を変えたりと、どの学校も巧妙にひとひねりしている。ただし、こうした問題は問題文を丁寧に読めば、解けることが多い。ここで50〜55点分くらい得点することで、合格に近い位置まで来ることは可能だ。

だが、それだけではあと一歩足りない。最終的な合否を分けるもの、それは塾のテキストにはない「初見の問題」をその場で解くことができるかどうかだ。以前から難関校・最難関校ではそのような問題が出題されていたが、25年度入試では中堅校でもそのような問題が多く見られた。つまり、中堅校の入試の難化が進んでいるということだ。

暗記学習だけの子、面倒くさがり屋をふるい落とす難問

初見問題の特徴は、まず問題文が長い。2〜3人の登場人物による会話文で構成されているケースもある。また、グラフや表などの資料が用意され、そこから必要な情報を読み取り、情報を整理していくことが求められる。つまり、「その場で考える力」が必要になる。こうした問題が出たときに冷や汗をかくのは、公式の丸暗記やくり返しの大量学習をしてきた子供たちだ。塾では見たことのない問題の上に、やたらと問題文が長い。これを全部読んでいたら時間が足りなくなってしまうのではないか、そんな焦りが調子を狂わす。

偏差値60以上の難関校になると、さらに問題が複雑になり、その場の対応力が重要になってくる。今年の難関校の算数入試は立体の切断の問題を出す学校が多かった。こうした問題を解くには、塾で習った解法知識はもちろん不可欠。でも、それだけでは解くことはできない。条件を複雑にすることで、単に公式に当てはめるだけでは解けないよう、どの学校も予防線を張っているからだ。

では、どのようにして解き進めていけばいいのか――。これはもう地道に切断の様子を見取り図に書き出して考えていくしかない。つまり、作業力や粘り強さが重要になる。「これを面倒くさがるような子はうちの学校には来てほしくない。ちゃんと自分で考え、自分の手で解き抜いた子に来てほしい」、そんな学校のメッセージが読み取れる問題だ。