認知症だと認識したらどうする?

【武政】認知機能の変化に気づいた時、どう対処すればよいのでしょうか?

【内田】難しい問題です。認知症は老化の一部なので、年を取れば認知機能は弱ってきます。ただ、若い時のように行かなくなってきた時には、まず受診をして治療可能なものがないか確認することが大切です。同世代の他の人と比べてどれくらいのレベルなのか、元のレベルと比べて急激に落ちていないかなど。

一方で、そこをちゃんと見立ててくれる医療機関がどれくらいあるか。これは正直なところ、心もとない状況です。診断後の支援も課題です。多くの当事者の方が、まず診断でショックを受け、そしてインターネットで調べて極端なネガティブ情報に触れ、さらに大きなショックを受けるんです。

【筧】診断を受けた時の対応も重要です。自分自身が認知症だと認識した時、大抵の人は「何もできなくなる」「人生は終わり」という古い認知症観に支配された状態で向き合うことになる。その結果、自ら引きこもってしまい、かえって症状が進行してしまうんです。

課題はコミュニティごとに様々

【武政】支援体制はどうなっているのでしょうか?

対談風景
撮影=吉濱篤志
対談風景

【筧】認知症に積極的に取り組む地域が少しずつ増えてきているのは良いことですね。認知症基本法ができて自治体に基本計画の策定が求められていますが、それを積極的に活かそうとしている自治体は限られています。

また、特定の担当者の熱意に依存している面も強く、担い手の厚みを増やしていく必要があります。

【内田】コミュニティごとに課題も違います。

福岡市の場合、仕事で移住してきた人が多く、地域に知り合いが少ないという課題があります。私自身もそうですが、仕事の関係で移住してきて、近所づきあいがあまりない。そういう環境では、困った時にどこに助けを求めればいいのかわからない。

一方、地方では若者が流出して、限られた人数でどう支えていくかという課題がある。だからこそ、地域の実情に応じた取り組みが必要なんです。

本当にコミュニティごとに持っている資源が違うので、「これが答えです」というような一つの解決策では対応できないんですね。

【筧】そういった意味で、古い認知症観を変えていく必要があります。「困っている認知症の人を周りでどう支えるか」という発想だけでは、もう立ち行かない。

認知症の人が多数派になっていく中で、一人一人の困りごとの背景にある理由を理解して、どう支援していくか、一緒に考えるという姿勢が必要になってきます。