任意保険とは補償内容がまったく違う
自動車事故に備える保険には、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)と自動車保険の2種類がある。簡単にその違いを記しておきたい。
図表1を見ればお分かりのように、自賠責保険は相手方への補償「のみ」である。ここでいう「相手方」とは、歩行者、自転車、事故相手車のドライバー含め全員が対象だ。また、相手方車両ではなく自車の同乗者も対象となる。
被害者保護のために被害者自身が直接、保険会社に対して損害賠償額を請求できるというのも、任意保険にはないシステムだ。
利潤を追求しないことが原則だが…
任意保険との大きな違いはもう一つある。政府が主導する被害者救済が目的の損害保険なので、保険会社の利潤になってはならないということだ。
自賠責保険の基本料率は、純保険料率と付加保険料率で構成されており、保険会社の利益は含まれていない。と言いつつ、実は過去、中古車販売最大手・旧「ビッグモーター」と保険会社の怪しい関係として、自賠責保険の「ごほうび契約」が取り沙汰されたことがあった。
「ビッグモーターを修理入庫先として紹介したら1件につき自賠責5件」という“闇約束”である。保険契約者からA保険会社に事故の連絡が入る→ビッグモーターの修理工場を勧める→入庫・修理確定→見返りにビッグモーターで車検を受ける際の自賠責5件分をA保険で契約する、というものだ。
損保各社に対してそんな「ごほうび」があったため、損保各社は入庫する工場が決まっていない契約者に対して盛んにビッグモーターへの入庫を勧めていたのである。損保によってご褒美レートは異なっており、入庫紹介1件につき自賠責7件という保険会社もあった。