高齢ドライバーに轢かれた30代の女性
私たちは交通事故と無縁で生きられない。たとえ自身が交通ルールを守っていたとしても、外出する限り、事故に巻き込まれる可能性はある。
交通事故に備えて、通常、自動車の所有者は自賠責保険と任意保険に加入している。自賠責保険は加入しなければ法律で罰せられるもので、強制保険とも呼ばれる。補償範囲は対人賠償に限定され、寝たきりや車椅子利用、介護が必要な方の介護料の支援などの補償がある一方で、一定の支払限度額以上の補償は受けられない。
任意保険未加入の自動車との接触事故に遭った場合、どのようになってしまうのか。また事故後、どうすればよいか。実際の交通事故被害者の体験と、交通事故に詳しい弁護士の見解を聞いた。
2児の母親として子育てをしながら会社員として働く浅田ふみさん(30代、仮名)が自動車に轢かれたのは2024年7月のことだ。事故当時の様子をこう話す。
「仕事からの帰り道、自転車で横断歩道を渡るところでした。もちろん、青信号を確認して渡ったのですが、右折してきた自動車に轢かれ、そのまま自転車だけ2メートルほど引きずられていました。私は地面に伏す格好になりましたが、おそらくドライバーはぶつかったことに気づいていないようでした」
浅田さんは立ち上がれる状態ではなかった。事故を目撃した付近のトラック運転手が降りてきて、彼女の肩を担いで歩道へ避難させたという。
「脚の付け根を打撲していたらしく、あとから見たらアザになっていました。地面に寝たまま起き上がることができなかったんです。私を避難させてくれたトラック運転手の方が救急車を呼んでくださり、病院へ向かいました」
事故当日に加害者を見ている浅田さんは、「いわゆる高齢ドライバーだった」と話す。また通常は迅速に連絡があるはずの保険会社から連絡が来ないことに違和感を持った。