トリドールホールディングス(東京都渋谷区)が展開するハワイアンカフェ・レストラン「コナズ珈琲」が急成長している。そこには、一般的なチェーン店では考えられない独自の戦略があった。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。

売り上げ、店舗数は急拡大

さまざまな業態が林立するカフェ業界で、いま売り上げを拡大するチェーン店がある。そのひとつが「コナズ珈琲」だ。

「いちばん近いハワイ」を掲げるテーマ型カフェで店舗数は45店(2025年2月26日現在)。1号店がオープンしたのは2013年12月だが、近年は店舗展開を加速する。2024年6月には宮城県に「コナズ珈琲 利府」(宮城郡利府町)がオープンした。

運営するのは「丸亀製麺」で知られるトリドールホールディングスのグループ会社、株式会社KONA’S(本社・東京都渋谷区)だ。2023年4月に分社化した。

最近はSNSでも話題を呼ぶ店だが、どんな仕掛けで集客しているのか。料理人出身という異色の経歴を持つ阿部和剛かずたか社長に聞いた。

今回の取材場所となったのは「コナズ珈琲 板橋店」(東京都板橋区)で、2024年10月24日にオープンした新店だ。

「オープン初日には約150名のお客さまにお並びいただき、3カ月たった現在も好調です。最寄り駅の都営三田線・志村坂上駅から徒歩約9分という利便性もあり、ハワイで人気の“マラサダ”(揚げ菓子)のテイクアウト専門店も併設しています」(阿部氏、以下同)

駅近、幹線道路は避ける

実はコナズ珈琲の店舗の大半はロードサイドにある。しかも、車通りの多い幹線道路ではなく生活道路と呼ばれる場所が中心だ。一般的に好立地とされる駅前の繁華街には出店しない。なぜそうしたエリアに出店するのか。

「私が携わってからはコナズ珈琲の店舗はハワイの民家を改装したような外観にしています。こうした独特な店舗なので、周囲に目立つ建物がない生活道路のほうが視認性は高いのです」

各地の幹線道路は物流の大動脈として交通量が多く、飲食チェーン店や紳士服店などが立ち並ぶ。そうした場所よりも一歩離れた生活道路のほうが脱日常感を訴求しやすいと言うのだ。

店舗にはマラサダ店を併設。
撮影=プレジデントオンライン編集部
店舗にはマラサダ店を併設。
味わいは本場ハワイと同じかそれ以上
撮影=プレジデントオンライン編集部
味わいは本場ハワイと同じかそれ以上

店舗面積は90~130坪、新店でも昔から営業しているような落ち着いた雰囲気だ。

「すべての店で外観や内装は異なり、同じしつらえの店はありません。画一化していないので建築コストはかかりますが、ブランドの世界観を優先しています」

ハワイの店を再現ではなく、“日本人がイメージするハワイの店”が持ち味だ。