4000人を超える患者との対話を通じてわかった、人生を豊かにする「折れないこころ」のつくり方とは
ソファの上で膝を抱えて窓を見る女性
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ネガティブな感情はむしろ「心の栄養」である

ビジネスパーソンの皆さんなら、就職の採用試験なら「面接でうまく答えられるだろうか?」、会社の重要なプレゼンなら「顧客に響く内容だろうか?」といった具合に、不安を抱えながら、さまざまなビジネスシーンでのピンチを、切り抜けてきた経験があるのではないでしょうか。

そうしたピンチに直面した場合、ほとんどの人が不安と戦い、「何とかして消したい、克服したい」と、思っていることでしょう。

しかし、がん患者専門の精神科医である私は、「不安を無理に解消しようとするのではなく、味方につけましょう」と、患者さんにお勧めしています。「ピンチはチャンスでもある」とよく言われますが、不安を味方にすれば、将来を切り開く原動力にもなります。もっと言えば、不安は、人生を力強く生きるために欠かせない「心の栄養」ではないかとも、私は考えています。

そう言うと、多くの人が、「ポジティブ思考が人生に役立つならわかるが、不安のようなネガティブな感情が、心の栄養とはどういうことか?」と、疑問を抱くでしょう。心理学の観点から見ると、主な感情は、「喜び」「悲しみ」「怒り」「不安」の4つしかなく、ポジティブな感情は喜びの1つしかありません。しかし、悲しみや怒り、不安といったネガティブな感情にも、実は、人間にとって大切な役割があることがわかっています。

例えば、悲しみという感情には、実は、心の傷を癒やす効果もあることをご存じでしょうか? 悲しむことで受け入れがたい過去と決別し、新たな人生をスタートさせる手助けとなっているのです。

怒りという感情にも、自分の大切な領域を守り、現在の問題を解決する力があるのです。不安という感情は、「自分の身に危険が迫っている」と知らせる、脳からの警告でもあります。

人間がもし不安を感じなければ、向こう見ずな行動に走りやすくなり、生命を脅かすリスクが高まってしまいます。不安という感情があったからこそ、人類は生存に関わるさまざまな危険を回避し、現在まで生き残ることができたとも言えるでしょう。

【図表】ネガティブな感情になってもいい交流分析における本物の感情4種類

ただし、不安という感情は、大きな効能がある半面、人生を狂わせ、破滅させる危険性も併せ持っています。皆さんにも、不安が心から離れず、「自由に楽しめる時間があったのに、無為に過ごしてしまった」といった経験があると思いますが、それ以外にも、不安によるマイナス効果はさまざまです。

例えば、仕事上の大きなミスで失業し、結婚を考えていた恋人に別れを告げられ、落ち込んでいる人がいたとしましょう。将来への不安が抑えられず、雪だるまのように膨れ上がっていくと、悪いほうにしか思考が向かなくなり、自分でも手が付けられなくなってしまいます。不安が暴走する、そうした心理状態を、専門的には「破局的思考」と呼んでいます。

落ち込んだ人が破局的思考によって、ついには「生きる希望がない。自分の人生はもう終わりだ」と勝手に悲観すると、「恋人を道連れに心中を図る」といった、最悪のシナリオになるケースもありうるでしょう。