昨年の風力発電の新設容量は目標の半分未満

ヨーロッパで風力発電の普及が足踏みしている。風力発電の業界団体ウインドヨーロッパが1月10日にリリースした資料によると、欧州連合(EU)域内で2024年に新設された風力発電の設備容量は約13ギガワットと、目標となる30ギガワットを大きく下回った。うち陸上風力が11.4ギガワットであり、洋上風力が1.4ギガワットという。

EUの執行部局である欧州委員会は、2023年に定めた行動計画で、30年までに風力発電の能力を、当時の204ギガワットから500ギガワットまで引き上げる必要があるとの試算を示した。この目標を達成するためには、風力発電を年間40ギガワット程度も新設する必要があるが、24年の実績はその半分にも満たなかったということになる。

2024年12月18日、ベルギー・ブリュッセルにある欧州理事会本部で開催されたEU・西バルカン首脳会議に先立ち、フィンランドのオルポ首相(左)、欧州委員会のフォンデアライエン委員長(右)、モンテネグロのミラトビッチ大統領、コスタ欧州理事会議長(右)が集う
写真提供=© Wiktor Dabkowski/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
2024年12月18日、ベルギー・ブリュッセルにある欧州理事会本部で開催されたEU・西バルカン首脳会議に先立ち、フィンランドのオルポ首相(左)、欧州委員会のフォンデアライエン委員長(右)、モンテネグロのミラトビッチ大統領、コスタ欧州理事会議長(右)が集う

ウインドヨーロッパは風力発電の普及が足踏みしている理由として、EUの定めた風力発電の新たな許認可ルールの各国での適用が遅れていること、送配電網の整備が遅れていること、電化そのものが遅れていること、の三点を挙げている。つまり、こうした阻害要因を取り除かなければ、風力発電の普及は計画通りには進まないというわけだ。

つまり、ウインドヨーロッパは、こうした阻害要因を取り除くための公的な支援を訴えているわけである。見方を変えると、欧州委員会は野心的な目標を掲げているにもかかわらず、風力発電の事業者に対して適切な支援を施していないわけだ。同時に、そうした支援がなければ、風力発電の普及がスピードアップなどしない現実も浮き彫りになる。

2035年までの新車の100%ZEV化(走行時に温室効果ガスを排出しない自動車、現実的には電気自動車であるEVを意味する)にも共通するところだが、欧州委員会には、極めて野心的な戦略目標を掲げる一方で、その実現のための戦術が甘いという特徴がある。実績の積み重ねより、高い目標にまずは参加者を誘導することを重視するためだ。

ドイツの村の近くにある風力発電
写真=iStock.com/Konstantin Sorokin
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