第2次トランプ政権の発足は、為替市場や地政学リスクにどんな影響を及ぼすのか。エコノミストのエミン・ユルマズさんは「ドル円相場はすでにステージが変わってしまった。また、日本周辺で実際に紛争が起こるリスクも高まっている。資産運用もビジネスもこうした流れを想定して備えておく必要がある」という――。

1ドル=150円がニューノーマルの時代に

為替相場は、2025年前半も円安ドル高傾向が続くでしょう。

日銀は昨年12月19日におこなわれた金融政策決定会合で政策金利を据え置きました。また、植田和男総裁は12月25日に経団連の会合で講演し、追加の利上げに関して「トランプ政権や2025年の春闘の動向を注視していく」ことを改めて強調しました。

これにより、少なくとも今年前半は1ドル=150円台の円安状態が続く可能性が高いと考えています。

ドル円の相場は、すでに1ドル=150円が新しい基準になったと考えておいたほうがいいでしょう。150円をニューノーマルとして、上下10円程度のボラティリティ(変動)を想定すれば、1ドル=160円台になれば円安、140円台になれば円高とのイメージです。

為替レート
写真=iStock.com/Torsten Asmus
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FRBの利下げとは裏腹に米長期金利は上昇

ドル円相場は、米国の金融政策の影響も受けます。米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.5%の利下げをしました。その後も11月と12月に0.25%ずつの利下げをおこない、トータルで1%利下げしました。

しかし、米国の長期金利(10年国債利回り)は、9月以降に1%程度上がっています。利下げ分と同じ程度、利回りが上がっているのです。これは矛盾した動きです。何が起きているのでしょうか。

【図表1】米国10年国債利回りの推移

トランプ氏の復帰が期待され、債券市場でトランプトレードがおこなわれたことも1つの原因です。ただ、それよりも大きかったのは、「米国の利下げがインフレを再燃させる」と市場が見ていることです。

にもかかわらず、FRBは9月になぜ利下げしたのでしょうか。彼らの言葉を引用すると「雇用市場がタイトな状況から少し通常の状態に戻ってきたから」です。

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