本人は成績優秀なのに、部下をどんどん辞めさせてしまうタイプの上司がいる。部下への対応を改め、離職を止めることはできるのか。経営心理士の藤田耕司さんは「こういった社員への対応では、プライドへの配慮を心がけてほしい。プライドを傷つけないように行動を改めてもらうことが重要になる」という――。
指を指すビジネスマン
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離職率を上げる2つのタイプの上司

今、日本では多くの会社が人手不足の状況にあります。

その中で次のような悩みを抱える会社が増えています。

採用競争は激化しており、募集をかけてもなかなか応募が来ない。そのため、社員に辞められると辞められた穴を埋められないため、会社にとって大きな痛手となる。

そんな状況で何人もの部下を辞めさせる社員は会社にとって悩みの種です。

その典型的なタイプが、①感情的になりやすい人、②部下に無愛想な人です。このタイプの人の下に繊細な部下がつくと、離職率はぐっと上がります。

最近の若い世代は教師や親から感情的に叱られることが減っており、また兄弟が少ないため兄弟喧嘩の経験もほとんどないなど、他者から感情をぶつけられることに対する耐性が弱い人が多い傾向にあります。そういった人が上司に感情的に叱られると心が折れるのです。

プレイヤーとして高い能力を発揮している場合も

また、上司が無愛想だと分からないことがあってもなかなか質問に行けず、一人で抱え込んで時間が過ぎ、「まだできないの?」と上司から聞かれた際に「分からないところがありまして……」と質問をする。そして「分からないところがあるなら何で早く聞かないの?」と上司に詰められ、ストレスを溜める。これが続くと離職に至ります。

しかし、人手不足の昨今では、繊細な社員であっても丁寧に関わって一人前に育て上げることが尚一層求められます。そのため、部下を辞めさせる社員は会社にとって大きな悪影響をもたらすものであり、会社としても然るべき対応をとる必要があります。

ただ、こういった社員が、営業成績が抜群に良い、ずば抜けて業務処理能力が高いなど、プレイヤーとして高い能力を発揮している場合があります。その場合、その社員を叱って辞められたりしたら、それはそれで大きな痛手となります。

なので、なかなか強くものが言えず、どうしたものかと頭を抱える会社も少なくありません。