日記にあらわれる紫式部の影

ただ、史料に紫式部の影がまったく見えないということではない。「光る君へ」で秋山竜次が演じている藤原実資の日記『小右記』には、たびたび取り次ぎの女房が登場する。

紫式部日記』によると、上級貴族たちが中宮の御所を訪れ、中宮になにかを伝える場合、中宮に直接伝えるのではなかった。それぞれの貴族に「おのおの、心寄せの人(それぞれがひいきにしている女房)」がいて、その女性を介していた。御簾越しに要件を女房に伝えると、女房はそれを中宮に取り次いでいた。

そして中宮で、一条天皇の死後は皇太后となった彰子の御所においては、実資の「心寄せの人」は紫式部だったと考えられている。実資自身が長和2年(1013)5月25日の条に、「越後守為時の女、此の女を以て、前々、雑事を啓せしむるのみ(越後守為時の娘=紫式部である女房を通して、さまざまなことを皇太后様に申し上げてきた)」と注記しているのである。