人気メニューは一皿350円の「サバの煮つけ」
「私が働き始めた当時は、この店を建て替えたばかりで、ピッカピカだったよ。ご主人は物静かな方だけど、反対に奥さんは元気はつらつでユーモアがあってね。お客さんに『お母さん、お母さん』って慕われてたかな」
午前11時、出勤してきた勤続40年のパート職員・神田八重子さんが教えてくれた。神田さんは店主の光利さんのいとこにあたる。店は現在、光利さんと妻の愛子さん、そして神田さんの3人で運営している。光利さんの両親が引退したいま食堂を最も長く見てきた彼女が、かつての食堂の様子を語ってくれた。
「サバの煮つけ、あれはよく売れましたね。もう、飛ぶように売れたんじゃない?」
サバの煮つけは創業当初から常連客に人気が高いメニューのひとつだ。光利さんはその味を変えないために、父の代からタレを継ぎ足しながら提供しているという。父の代は一皿250円、現在は350円だ。
夜勤明けに食堂でサバの煮つけを食べ、家に帰って眠るのが至福だと語る常連客がいる。毎週土曜日の朝、食堂に通う男性(64)だ。
「お腹いっぱい食べても700円でおつりが来ます」
【夜勤明けのサバ煮】名古屋市在住の男性(64)
サバの煮つけ、あれを食べたときに、「おいしいなあ……」って心から思いました。
半年ほど前、夜勤仕事の休憩中に、どなたかのブログで食堂のことを知りました。こんな食堂があるんだ、しかも昭和40年創業で、代が変わっても続けていらっしゃる。そして、職場からそう遠くない。朝6時半からやっているので、さっそく夜勤明けに行ってみようと。
私は名古屋市内に住んでいて、毎週金曜日の夜、25キロ離れた飛島村に出勤しています。働くのは夜8時から、翌朝の8時までの12時間。ある運送会社の給油施設で、夜間「給油監視」の仕事をしています。ガソリンは危険物なので、提供するには「危険物取扱者」の資格を持つ人が必要なのです。
今年で64歳になりますが、名古屋で生まれ育ち、他の町に住んだことはありません。言葉に名古屋弁のアクセントがないのは、30年間司会業を営んでいたからでしょう。30歳の頃から結婚式の司会や式場の手配、社員教育や司会者育成の仕事をしておりました。こう見えてけっこう引っ張りだこだったんですよ。人を雇って会社を法人化させて、30年間頑張ってきました。
しかし、2020年のコロナで取引先の90%を失いました。今では年に一度仕事があるかないか。コロナが終わっても、仕事は戻って来ませんでした。今は家族婚が主流ですから、私の出番はありません。時代が変わったんでしょうね。
土曜日の朝、夜勤を終えて日光橋食堂さんで朝食をいただくのが、私にとっての一番の楽しみです。店に入ると、ちょうどテレビで「プロジェクトX」の再放送が流れています。それを見ながら朝食をとるんです。ご飯と豚汁と、サバの煮つけ。お腹いっぱい食べても700円でおつりが来ます。