ただ、韓国の英語教育がすべてうまくいっているわけではない。高敞南小の6年生のクラスの中で、ネイティブ教師の発言を理解し、積極的に授業に参加していたのはせいぜい全体の3分の1程度だった。教師が何を言っているのかよくわからないという顔で、ボンヤリと参加し、質問にもうまく答えられない児童もほぼ同数いた。残りの児童はその中間といった感じだ。
梁先生に「英語塾や家庭教師を使って勉強している児童の割合」を聞いてみた。この学校の場合、3年生で3分の1、高学年になるとクラスの3分の2に増えるそうだ。ネイティブの先生の言葉が理解できない児童の数と、学校外で英語を勉強していない児童の数がほぼ一致するのは偶然ではないだろう。
クラスの3分の1の児童はついてきているので、英語による授業はそのまま進められる。できる子は引き上げられ、できない子は切り捨てられる。これは「強烈な競争社会・韓国」の縮図でもある。
日本の公立小学校の現状と比較すると、10年、20年先を行っている韓国の地方公立小学校の英語教育だが、ソウルの教育レベルの質量はさらに上だ。海外で英語教育学の博士号を取った人たちなどが最新の教育理論をもとに新たに開設した私塾が次々に生まれ、他塾と生徒を奪い合っている。教育熱心なママたちも、よりよい英語塾に関する情報収集は欠かさない。ソウルの状況については、またいずれリポートしよう。
熱すぎる英語教育熱による多くの弊害を知りながらも、流れは止まらない。日本人が「早期英語教育の是非」についてもめているすきに、お隣の国はずいぶん先まで進んでしまっていたようだ。
(李秉烈=撮影 白名伊代(海外書き人クラブ)=編集協力)