ステップ3の間、あなたは相手に反論する形でではなく共感する形で前向きに対応していることになる。自分が相手を応援していること、前向きな言動を示したら、上司の支援と関心という見返りが得られることを相手に伝えていることになる。下降スパイラルを上昇スパイラルに変えているわけだ。

私自身は妻に対し、子どもをケンカせず遊ばせるのに、これまでどんなことが効果があったかと聞いてみた。彼女は、私たちが子どもたちと一緒に工作をすることで、彼らを前向きにさせたときのことを思い出した。

5分もしないうちに、妻との会話は後ろ向きなものから前向きなものへと変わった。

これら3つのステップをやり通すのは簡単なことではない。私たちは愚痴をこぼす人を否定的に見る傾向があり、その傾向と戦わなければならないからだ。

ダメ組織が、大逆転した瞬間

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私がダンと最初に話したとき、彼は部下の何人かを今にも解雇しようとしていた。しかし、実際、彼はそうせずに、部下の後ろ向きの感情に耳を傾け、それを認めるようになった。そして彼らが不満を口にするのは、実は不安を感じているからだということに気づいた。会社は先ごろレイオフを実施しており、残った者たちもクビになるのではと動揺していたのである。

ダンは君たちは大丈夫だとは言えなかった。不満ばかり言う部下を解雇しようとしていたのだからなおさらだ。代わりに彼は部下の不満に耳を傾け、不安の一部に共感を示した。解雇への不安に対してではなく、仕事が山ほどあるのに人の数は減った状況で不安定な気持ちになっていることに対してだ。要するに、彼らに共感する形で後ろ向きに対応したのである。

その後、会社の成長と雇用の確保に役立っている部下たちの前向きな部分に焦点を当てて賞賛した。賢くリスクをとる、複雑な営業案件について協力する、顧客とうまく協働する、などだ。部下に共感する形で前向きに対応したのである。

ダンは部下の前向きな姿勢に注目し、それを賞賛する機会を見逃さなくなっていた。やがてムードが変わり、チーム全員が協力して、会社の歴史上、最も大口の顧客を獲得したのである。

(ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)
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