妻との会話で学んだ「共感する」力

では、どうすればいいのか。私がその答えに気づいたのは、妻のエレノアが子どもたちのケンカについて愚痴をこぼし、それに対して私がダンと同じ過ちを犯したときだった。私は最初、子どもは誰でもケンカするもので、うちの場合はさほどひどいケンカではないと、妻を説得しようとした。妻は納得せずにさらに泣き言を言い、私はそれにいら立って妻に負けないくらい不平を言ったのだ。

妻は怒った。が、その後、私に自分が何を求めているのかを説明してくれたのだ。

「私は一緒に考えようと言ってもらいたい。それに、あなたが私のもどかしい思いに共感してくれるかどうかも知りたいの」

実際には、私は妻が感じているもどかしさに共感していたのだが、後ろ向きになるまいとしていたのである。そして、それは彼女とのやりとり全体をさらに後ろ向きにした。

この後、私は思いがけないひらめきを得た。対応そのものではなく、方向を変えるだけでよいことに気づいたのだ。

ダンが部下に対してとったのは、部下に反論する形での後ろ向きの対応(「彼らを沈滞から引きずり出したい」)と、同じく反論する形での前向きの対応だった(「どれだけ大きな機会が広がっているかを説明」)。が、それよりはるかに生産的な対応は、相手に共感する形で後ろ向きの対応をし、共感する形で前向きの対応をすることだ。後ろ向きの人々を前向きにさせる3段階の方法を紹介しよう。