「追い払いをしていても、もっとうまく、もっと早くできることがないか、いつも考えています。師匠から教えてもらった大事な基礎は守ります。でも、師匠とは鷹が違うから、ぜんぶがぜんぶ、教えられた通りにはいかないんですよね。基礎から枝を広げるようにして、自分の鷹に合ったやり方を探しています。諏訪流放鷹術では鷹に仕えるようにやれと言われるんですけど、人間が鷹の言いなりになるのも違うし、鷹を人間に合わせさせるのも違う。終わりがなくて、深い世界です」
鷹は人を映す鏡
鷹匠としてストイックに生きる江頭さんだが、仕事以外の話になると明るい性格がのぞく。意外だったのは、「カラスが好き」。
「仕事の時は、いい加減どっか行ってよと思いながらやってますけど、私、カラス大好きなんです! 最近、ガチャガチャとかぬいぐるみとか、カラスのグッズが多くて、めちゃめちゃ集めてます」
いつも対峙しているカラスのグッズが自宅にたくさんある鷹匠も珍しいだろう。自分の将来について、鷹との生活をベースに想像しているのもユニークだった。
「今年28になるんで、結婚とかも周りからがーがー言われるようになりました。同業者は意見がバチバチにぶつかりそうなんで、難しいですね(笑)。鷹匠の仕事についてある程度理解してもらいつつ、干渉はしないで、自分のやりたいことに熱中してくれる人だったいいですね。仕事もあるし、鷹のお世話もあるから、四六時中一緒にいるというより、お互いタイミングが合う時にご飯を食べたり、遊びに行ったりする感じかな」
鷹匠には「鷹は人を映す鏡」という言葉があるという。鷹の性格や動きを見れば、飼い主である鷹匠のことがわかるという意味だ。落ち着きのない人の鷹は落ち着きがなく、神経質な人の鷹は神経質になるらしい。
3羽の最期まで寄り添い続ける覚悟
取材の日に何度も目にした、蓮ちゃん、真ちゃんが羽ばたく様子を思い浮かべた。その姿は清々しく、どこか柔らかだった。その印象は、まさに江頭さんそのものだ。
仕事をいつまで続けたいですか? と尋ねた僕は、できる限りずっと、という言葉を想像していたが、意外な答えが返ってきた。
「あと20年ぐらいかな。今いる子たちに、病気や事故じゃなく、寿命を全うしてもらったら、終わりかなと思います」
その穏やかな表情は、苦楽を共にしてきた3羽への思いに溢れていた。