そもそも嫉妬を生みやすい相手の条件は、「自分のコンプレックスを刺激する」「自分に欠けているものをもっている」「近親憎悪につながるような共通性が自分と相手にある」の3つ。これらが揃うと嫉妬が起こりやすいのです。それを理解しておくことも、嫉妬の原因を冷静に自己分析する助けになります。
冒頭でも説明したように、嫉妬とは相手への羨望と否定が入り交じったアンビバレントな感情です。恋愛で「ただひたすら好き」よりも「憎たらしいけど愛してる」という気持ちのほうが、はるかに強く長く持続するように、嫉妬の感情も両義性があるゆえに非常に強く、なかなか心から離れてくれません。だから嫉妬をしないようにするよりは、嫉妬を成長というポジティブな力に転換していく練習をするのが、現実的な解決策になるのです。
私は病院の心療内科で患者さんのカウンセリングをしているのですが、患者さんが抱える問題の多くは、根本的には解決できないものばかりです。しかし、治療を通して患者さんがそれを忘れることができるようにしたり、どうでもいいと思えるようにすることはできる。それが治癒したということなのですね。
ですから嫉妬も、その原因を根本的に解決したり、心の中から追い出そうとするのではなく、自己の成長という生産性のあることに使えるようになれば、それが最良のゴールではないでしょうか。
(構成=石田純子)