1on1をしても離職率が増える

ここ数年、離職防止やモチベーション向上のために、1on1を導入する会社が増えています。

1on1とは、部下の本音や悩みなどの把握を目的として、比較的フランクな雰囲気の中で部下の自発的な発言を尊重しながら、上司と部下の双方向のコミュニケーションを行うものです。

私も1on1の導入に関する相談を受けることがありますが、その中でこんな事例がありました。

その会社は離職者が多いという悩みを抱え、その解決のために社長自ら1on1を実施していました。ところが離職者は減るどころか、むしろ増えている気配すらあるとのこと。

退職届
写真=iStock.com/shironagasukujira
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社長にはとてもじゃないけど言いたいことなんて言えない

そこで私がコンサルタントとして関わり、まず部下の方にヒアリングを行いました。その結果、こういう意見が多く聞かれました。

「社長が『悩みとか不満があるなら話して』と言うものの、社長はトップダウンでものを言う人なので、とてもじゃないけど言いたいことなんて言えないです」
「社長に不満なんか言うと『お前はわかってない!』って説教されそうで怖いです」
「1on1は部下の話を聞くための機会だって人事から聞いてたんですけど、結局、社長の昔話を聞かされて終わりでした。『ありがとうございます。勉強になりました』と言うと、社長はご満悦でした」

つまり、1on1をしたつもりが、まったく1on1になっていなかったのです。

この事例からもわかるように、普段から話を聞く姿勢がない人は、相手から「この人は自分の気持ちをわかろうとしてくれない」という印象を持たれます。

その状態で「悩みや不満があれば話してほしい」と言ったところで、相手は悩みや不満があったとしても「あ、大丈夫です」と言って話してはくれないのです。