マインドフルネスの意味
不安を手放したいとき、マインドフルネスがどのように役立つのか、私は次のように吉岡さんにお伝えしました。
「マインドフルネスという言葉は聞いたことがありますが、どんなことを意味するのでしょうか」
「たとえば、美しい自然のなかをお父さんと小さな女の子が歩いていて、女の子の頭のなかには目の前の景色がそのまま浮かんでいるとします。これは、こころが満たされた状態です。
一方で、一緒に歩いているお父さんは仕事のことなどで頭がいっぱいで、翌日の会議がうまくいくかどうかが気になって、目の前の美しい景色を感じるゆとりがありません」
「それでは自然のなかにいても、こころは安らぎませんね」
「マインドフルネスとは、いま起きているひとつひとつのことに身体の五感を意識して集中することなんです。“こころが満たされている(マインドフル)”状態は、“頭がいっぱい(マインド・フル)”の状態とは異なります。
人間のこころは移ろいやすく、目の前のことから離れ、未来や過去について考えがちです。けれど未来について考えれば不安になり、過去の失敗に目を向けると気持ちが落ち込みます」
「目の前のことに集中する――当然にも思えますが、簡単でない場合も多いのですね」
「心理学の研究を通して、自分が何にとらわれているかを意識して取り組めば、マインドフルネスを高められるとわかっています。
マインドフルネスが人生を豊かにする
私自身もマインドフルネスに取り組んだ経験があるのですが、そのときも大切なことを学んだ実感がありました。ごはんを食べるときはその味や舌ざわり、のど越しをしっかり味わう。
自然のなかでは、景色を見るだけでなく風の心地よさや大地の香りを受け止める……。いまこの瞬間に集中するのは不安への対処にとどまらず、人生を豊かに生きることにつながるのではないでしょうか」