行動を変えることで感情を変える

「考えないようにする以外に、どんな方法があるんでしょうか」

「不安や悲しみなどの感情を直接コントロールするのは難しいですが、“行動を変えることで、感情を変える”という方法があります」

「行動を変えることで感情を変える⁉」

「認知行動療法という科学的に有効性が示されたカウンセリング法のひとつで、比較的手軽に取り組めるものです」

「認知行動療法という言葉は聞いたことがあります」

「認知とは、現実の受け取り方や考え方を指します。ストレスを感じると悲観的に考えがちになります。認知行動療法では認知や行動にはたらきかけて、こころのストレスを軽くします。

【図表1】不安日記 記入項目
認知行動療法研修開発センター・大野裕氏提供『不安を味方にして生きる: 「折れないこころ」のつくり方』(NHK出版)P42

不安の程度は1日の中で変動する

多くの患者さんは、病気について心配事があっても、友人とおしゃべりしているあいだは気がまぎれると言います。一方で、ひとりでいるときにネットで病気について悪いことが書かれているのを見ると不安が強まるようです。

“不安でいっぱいです”と言う患者さんにくわしく話を聞いてみると、不安の程度は1日のなかでも高くなったり低くなったりしていて、その程度は行動の内容に大きく影響を受けています。きっと吉岡さんもそうだと思いますよ」

「そうでしょうか」

「私は“不安日記”と呼んでいますが、正式には週間活動記録表(図表1)というものがあります。試しにつけてみませんか? 1日の行動と、そのときの不安の程度を0〜100%(もっとも強い不安→100%、不安がまったくない→0%)でつけてみてください。たとえば、8時に“起床”と記入し、そのときの不安の程度を書きます」

「1週間も記録するのは大変そうですね」

「難しければできる範囲で、たとえば2日だけでもいいですよ」

「2日間だけなら、なんとかできそうです」