空腹で目が冴えるのに、満腹になると眠くなってしまう理由
ちなみに、空腹で目がさえて眠れなくなったり、満腹で眠くなったりするのも、オレキシンが関わっています。空腹で、血糖値が下がると、オレキシンをつくる神経細胞が活発になり、睡眠と覚醒のシーソーが、目が覚めた状態を維持しようと覚醒側に傾くのです。
一方、食事のあとは、血中の糖分(血糖値)が上がります。その結果、オレキシンをつくる神経細胞を抑制するので、眠くなります。
覚醒と睡眠は、モチベーションや情動、ストレスだけでなく、栄養状態によっても大きく左右されるのです。
このように、不安やストレスがあって寝つけなくなるのは当たり前のことです。眠れないことを悩まずに、不安やストレスを軽減することに目を向けてみてください。
「最低7時間は睡眠をとる」は嘘
睡眠には個人差や年齢差があり、1人ひとりで最適な時間が異なります。
では、自分にとって最適な睡眠時間はどれくらいでしょうか?
1982年、アメリカの100万人以上を対象にした調査では、6.5〜7.4時間睡眠の死亡危険率がもっとも低いことが示されました。この調査結果を受けて、睡眠時間は7時間前後がベストだという考えが根強く浸透しています。
しかし、調査対象者が30〜102歳の男女と幅広く、睡眠時間もベッドでゴロゴロする時間も含まれている可能性が高いので、正確性に欠けています。つまり、30歳以上の人が、病気をしないで寿命を延ばすのに、一番良い睡眠時間は7時間前後かもしれない、と考えるべきです。
ちなみに、認知機能を調べた実験では、睡眠時間「7時間」と「9時間」との比較でさえ、9時間睡眠のほうが認知機能は高かったという結果もあります。
また発明王のエジソンやフランス皇帝のナポレオンは短時間睡眠で有名ですが、アインシュタインは10時間以上眠っていたともいわれています。これら偉人の睡眠習慣から、自らの睡眠時間を導き出すのも早急です。
近年ではメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手がかなり長く睡眠をとっていることで有名ですが、パフォーマンスを発揮するために必要な睡眠時間を把握し、確保することで、偉業を成し遂げているのかもしれません。