ノンレム睡眠中に、脳に溜まったゴミを除去する
たとえば、飲食店ではお客さんの食事中に掃除をすると不都合が多いので、閉店後や休業中に掃除をしますよね。それと同じように脳の機能が低下したノンレム睡眠中に、脳に溜まったゴミを除去しているのです。
老廃物は、起きている時間が長ければ長いほど蓄積されていきます。眠気をもたらす力「睡眠圧」を高める働きとして、脳内の老廃物を洗い流すことも、記憶情報の整理と同様に、重要な要素だと考えられています。
ただし、最近ではノンレム睡眠の老廃物除去に関して、否定的な実験結果を提示する論文もあるので、今後の展開を待ちたいところです。
脳の老廃物では、認知症患者の約6割を占めているアルツハイマー型認知症の原因の1つとされている「アミロイドβ」が知られています。
マウスの実験では、睡眠を絶つことでアミロイドβが脳内に蓄積することも報告されています。認知症の発症にグリンパティックシステムが関与しているかどうかはいまだ結論は出ていませんが、認知症と睡眠には、なんらかの関係があることは間違いないでしょう。
脳に溜まったゴミを、睡眠で毎日しっかり除去していくことが必要なのです。
どうして「楽しみな遠足の前日」は眠れなくなるのか?
大事なプレゼンが翌日にあり、目がさえて眠れなかった。明日取引先にトラブルの処理に行くことを考えたら寝つけなくなった――。自分にとってストレスや不安に感じることがあって眠れなくなるのはごく自然なことです。
また、小学生のときに、遠足の前日はうれしくて眠れない夜を過ごした人も少なくないでしょう。すごくうれしいことや楽しいことが翌日に控えているときに眠れなくなることも正常なことです。
不安や期待が入眠を妨げるのには、「オレキシン」という脳内でつくられる神経伝達物質が深く関わっています。
オレキシンの中心的な機能は「覚醒を促し維持すること」です。不安やストレスで目をさえさせ、寝つけなくさせる。あるいは、うれしくて眠れない夜を過ごすのもオレキシンによるものです。
睡眠と覚醒は、シーソーにたとえられることがあります。オレキシンは、このシーソーにおいて、覚醒側に大きく傾けるように強くサポートしています。
気持ちの高ぶりは、オレキシンをつくる神経細胞を活発にさせます。それが覚醒を生むのです。
また、ストレスや不安があると、自律神経のなかでも、アクティブモードの交感神経が活性化し、ストレスホルモンが分泌します。それによって、オレキシンをつくる神経細胞が興奮することから眠れなくなるのです。