「専属の案内係が立たなければ…」現場の声

しかも「現場の声」を知れば、マイナ保険証に現在便益を感じている人ほど、今後大きな不便に直面する可能性が浮かび上がってくる。先述の事務職員は言う。

「今はまだ1日4~5人だから良いのですけど……これがもっと増えてきたら“マイナ保険証用の列”に1人専属で案内係が立たなければならなくなると思うんです」

やはり懸念したとおり、機械の操作に戸惑い立ち往生してしまう人が少なからずいるという。何度も使用経験があって「こんな便利なものを使わないなんて信じられない」という人であれば操作などお手のもの、なぜ戸惑うのか理解できないかもしれないが、「現実」は現場が一番よく知っている。

じつは、すでにマイナンバーカード保有者の7割以上がマイナ保険証の利用登録している(本年4月末で78.5%)とのことだが、まだ10%そこそこの人しか利用していない。だから今は“長蛇の列”にこそなっていないが、12月以降はどうなるだろうか。

「リーダーにかざせば受付完了」とはならない

もちろん12月2日以降も有効期限内の現行保険証は使えるから、この日をもって、一気に登録者の全員がマイナ保険証に切り替えるということにはならないだろうが、政府広報のせいで「保険証が使えなくなる」と誤解して、登録しつつもこれまで使っていなかった人が急に利用し始める、つまり「新米のマイナ保険証利用者」が急に増えてくる可能性は十分考えておく必要はあろう。

だがすべての医療機関で、その事態への万全の対応ができているとは言いがたい。多くの診療所では、受付に設置されているカードリーダーはまだ1台のみなのだ。1人でもまごまごと操作に手こずる人が発生すれば、患者さんの集中する時間帯などは、あっという間に列が伸びていくだろう。

今までほとんど並ばずスッと済ませられていた人ほど、そのギャップにイライラしてしまうことは容易に想像がつく。専属の「操作案内係」が列に張りついて説明し続けないと混乱やトラブルが生じかねないというのが、この事務職員の予測だ。

単純に機械の操作の問題だけではない。操作にあたっては、顔認証や暗証番号の入力をおこなったのちに、「特定健診情報」「薬剤情報」の提供に同意するか否かを問う画面になるが、事務職員によると、同意したら良いか否かを判断できないことから操作が滞る人もいるという。