世界的に否定されていた定説を覆す発見だった

〈プラズマ乳酸菌とは、人の免疫機能の維持をサポートする乳酸菌。免疫細胞には会社と同じように上下関係があり、指示命令する“上司”に当たる立場の「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」がいる。これにちなんで名付けられたプラズマ乳酸菌は、pDCを活性化させる特性をもつ。

職場と一緒で上司が元気になると、現場で働くメンバーの免疫細胞も生き生きと動き、健康な免疫の維持が可能になっていく。ちなみに、メンバーにはウイルスなど外敵に対し抗体を作る細胞、外敵に侵された細胞を殺傷する細胞、これらの働きを助ける細胞などがある。

80年代半ばから、ビール発酵の大敵である乳酸菌の研究を続けてきたキリンが、世界で初めてpDCを活性化できる乳酸菌の存在を論文報告したのは2012年。それ以前は、乳酸菌がpDCの活性化を促すことは世界的に否定されていた。なので、世界の常識を覆すイノベーションと位置づけられよう。消費者庁に機能性表示食品登録の届出を行い、20年8月に受理される。「免疫」に関する機能の届出受理は史上初だった〉

キリンホールディングスの南方健志社長・最高執行責任者(COO)
撮影=門間新弥

「世界の飲料にプラズマ乳酸菌」としていきたい

――“インテル・インサイド”にならい、“プラズマ乳酸菌入ってます”を健康食品の世界標準にする、という世界制覇への野望が、キリンにはあると思います。

飲料やタブレット、ヨーグルトなど自社ブランドの「iMUSE(イミューズ)」だけではなく、国内外の食品・飲料会社にプラズマ乳酸菌を素材として提供しています。海外展開はどうですか。

【南方】国内は順調です。しかし、海外はこれからという状況。少子高齢化が進む先進国ばかりではなく、経済成長をしているアジアも重要なターゲットと捉えています。すでに、ベトナムの会社には供給を始めている。タイやインドネシアに販路を持つブラックモアズにも、供与できると思います。

プラズマ乳酸菌についての説明を行い、世界にパートナー企業を広げていきたい。そのためには、国境を越えた信頼関係の構築は求められるでしょう。

世界の飲料には、プラズマ乳酸菌が入っていると、していければと。