修羅場に立ち向かうために大切なこと

――ビジネスパーソンなら誰でも同じでしょうが、困難な事態は必ず待ち受けます。こんなとき、ヤケ酒を飲む人もいますが、1984年入社の南方さんは、どんな心持ちが大切だと考えますか。

【南方】決して、逃げないことです。協和発酵バイオの社長だった2019年、防府工場で届出とは異なる方法で医薬品を製造していたことが発覚しました。

〈山口県は同工場に対し業務停止命令、さらに品質管理を求める業務改善命令を出した〉

ヤケ酒を飲めないくらいに、私は追い詰められました。しかし、逃げなかったことがよかったと思います。深刻な問題に対し、背を向けてしまっていたなら、さらに厳しい事態を招いていたはず。

発生してしまった問題を受けとめる一方で、前向きに向かい合う。社長室で部下から最初に報告を受けたとき、「とにかくウミを出そう」と話したのを覚えています。

〈キリンの元役員は言う。「南方さんは真面目で優秀。裏表のない人柄です。そして苦労人。技術畑出身だが、30代でキリンヨーロッパ(デュッセルドルフ)に勤務し、50代ではミャンマー・ブルワリー社長も務めるなど海外経験をもつ。どちらかと言えば、1を10にするのが得意であり、ヘルスサイエンス事業をいかに成長させるかに、期待がかかります。また、経営トップとなった南方さんの、0から1も見てみたい〉

キリンホールディングスの南方健志社長・最高執行責任者(COO)
撮影=門間新弥
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