お金持ちこそ金銭感覚がシビア
しかし、身体機能が低下しているため重い米などは持てないため、頻繁に菓子類などを取得しているようだ。6畳1間の部屋も閑散としていて、ほとんど物がない状態。入浴は週2回のデイサービス(通所介護)で済ませる程度である。
担当社会福祉士は生活保護申請を勧めるが、おそらく預貯金が100万円程度あるため難しいのだという。徐々に預貯金を取り崩しているようだが、できるだけ使わないようにしている。とりあえず預貯金さえなくなり生活保護を申請すれば、いまのような貧しい介護生活からは脱却できるのにと、その社会福祉士は話す……。
いっぽう超高級マンションに住む、田中キミさん(90歳、仮名)は要介護1で独居高齢者。3LDKに独りで住み、時々、家政婦を雇うこともあるようだ。介護保険によるヘルパー(訪問介護員)利用は、介護人材不足の影響もあって派遣できる時間帯に制約があって希望に合わないこともあるからだという。
その社会福祉士は何度かマンションを訪ね相談にのったようだが、リビングの家具には高級感が漂い、家政婦が出してくれたコーヒーカップなどは「セレブ生活感」を思わせるものだったという。毎月の年金額は自身の国民年金と夫の遺族年金を合わせると約8万円ぐらいだというが、よほどの資産家であると推測される。子どもはいないため、亡くなったら甥や姪が遺産を相続するのかもしれないと……。
しかし、毎月の介護保険料が、年金から天引きされる(自動的に引き落とされる)ことに対してはシビアだそうだ。また、介護保険の自己負担に関しても本人は細かくチェックしており、例えば、ヘルパーの派遣回数をしっかり覚えている。
介護保険は出来高払いの料金体系であるため、1回ごとのヘルパー派遣回数によって自己負担分が計算されるためだ。話を聞いた社会福祉士の経験では、裕福な高齢者ほど金銭問題には1円単位でシビアで、毎月の請求書及び明細書などの問い合わせが多い傾向にあるという。もっとも、金銭感覚に敏感だからこそ、裕福になれるのかもしれないとも語っていた。
生活保護世帯の5割は「単身の高齢者」
生活保護受給は世帯単位でなされており独り暮らしであっても1世帯、4人暮らしでも同様である。全国の生活保護受給世帯数は約165万世帯で、実際の保護受給者数は約202万人である〔厚労省「生活保護の被保護者調査(令和6年3月分概数)の結果」2024年6月5日〕。
もっとも、いまや生活保護受給者の約55%は高齢者層である。そのうち高齢者世帯の約9割が単身高齢者世帯(独居高齢者)となっている。具体的な受給額は、大都市部と地方農村部で差があり物価などが考慮されている。
基本的には生活費に相当する「生活扶助」と、住宅費といった家賃代に相当する「住宅扶助」が大きく占め、基準額として単身高齢者世帯では約10万~13万円。老夫婦世帯の2人暮らしであれば約14万~18万円程度である。もっとも、年金収入等があれば、その基準額から差し引いた金額が毎月支給される。仮に、基準額10万円であれば、毎月年金5万円の収入があるとすれば差額の5万円が生活保護受給額となる。