高齢者が生活保護を受ける場合のメリット
それに医療保険料、介護保険料、そして、これらのサービス利用者負担分(自己負担分)は、「介護扶助」「医療扶助」といった受給として認められており負担はない。つまり、生活保護受給者となれば医療や介護には、一切の負担がなく一定のサービスを受けられる。
特に、毎月の年金額が8万円であった場合、生活保護受給者となれば差額2万円分の受給額が保証されることよりも、医療保険や介護保険における負担が「ゼロ」となるほうが実質的なメリットは大きい。もっとも、生活保護申請が認められ受給が決定されるには、貯金は「ゼロ」であることが原則である。
しかも、申請者の「扶養照会」が親族になされることもある。扶養照会とは、3親等内の親族に当該申請者に何らかの支援はできるかといった問い合わせを福祉事務所(市役所)が行うものだ。ただ、扶養照会の程度は福祉事務所によって差があり、必ずしも詳細な問い合わせがなされないこともある。
高齢者が独りでアパート暮らしをしている場合、要介護者となれば、適宜、ヘルパーに頼んで身の回りの世話になると考えるだろう。確かに、このような状況が大半ではあるが、一部、都市部には生活保護層を対象とした高齢者アパートがある。もちろん、住人は独り暮らしが大半である。
「介護生活の最下層」は生活保護の受給者ではない
大阪市西成区にある高齢者アパートを取材した(2021年11月12日)。このアパートは家賃が約4万円で、居住者は全て生活保護受給世帯である。要介護者が多く、ここからデイサービスやリハビリ(リハビリテーション)施設に通う者も多い。
20年前は日雇い労働者用の簡易な宿泊所(ドヤ)であったが、現在、日雇い労働者がそのまま高齢者となり、宿泊所経営も生活保護受給世帯層に特化したそうだ。各部屋に風呂はなく共同のシャワー施設はある。近くに銭湯もあるが、多くの要介護者は、昼間、デイサービスに通うことで入浴は済ませている。
部屋の間取りは6畳1間で小さなキッチンが設けられトイレは各部屋に設置されていた。ある要介護者が住む部屋を本人同意の下、垣間見させてもらったのだが、畳部屋に、ちゃぶ台1つと小さなテレビぐらいしかなかった。住人の大半は天涯孤独で、身元保証人もいない。ただし、アパートの大家さんにとってみれば、何かトラブルが生じた際には全世帯が生活保護受給者であるため、大阪市役所のケースワーカーが対応してくれるので安心のようだ。
このように預貯金など財産もなく生活保護受給者となれば、「介護」生活においては必ずしも「最下位層」とはならない。必要であれば介護保険サービスも、自己負担額を気にすることなく区分利用限度額内であれば利用できる。毎月の介護保険料負担もなく、無年金者であっても心配はない。